離婚相談に詳しい奈良の弁護士ならナラハ奈良法律事務所 TOP > 夫又は妻がうつ病の場合の離婚
憂うつな気分や様々な意欲が低下する抑うつ気分が強い状態を抑うつ状態と言い、この抑うつ状態がある程度以上重症である場合を、うつ病とよんでいます。
うつ病の分類の仕方には幾つかの方法がありますが、代表的なものとしては、①外因性あるいは身体因性、②内因性、③心因性あるいは性格環境因性、の3つに分類できます。
このような分類方法の他、アメリカ精神医学会はDSM-Ⅳという診断基準を出しています。
自分で感じる症状としては、憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい、不安、イライラする、元気がない、集中力がない、好きなこともやりたくない、細かいことが気になる、悪いことをしたように感じて自分を責める、物事を悪い方へ考える、死にたくなる、眠れないといったものがあります。
周囲からみて分かる症状としては、表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増えるといったことがあります。
体に出る症状としては、食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛、肩こり、動悸、胃の不快感、便秘がち、めまい、口が渇くといったことがあります。
このような症状がみられる場合には、うつ病の可能性を考えてみて下さい。
まずは、①外因性あるいは身体因性うつ病かどうか、検討します。①に該当しない場合には、うつ状態が一定の基準をみたす場合には、抗うつ薬療法を考えますが、うつ病が軽症である場合には、抗うつ薬がそれほど有効ではないとの報告もありますので、有効性と副作用を慎重に検討する必要があるようです。
(以上、1~3は、厚生労働省のHPを参考にしています。)
あなたの配偶者が、最近、表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増えている、といったことはありませんか。そうこうしているうちに、例えば、ある日突然、仕事に行きたくないと言って会社に行かなくなってしまった、家事ができないと言って家の中がゴミだらけになっている、「自分はダメな人間だ」「生きてる価値がない」「死にたい」などと繰り返し言う、といったことで悩むようになっていませんか。また、配偶者がうつ病ではないかと疑っても、本人が病院に行ってくれない、子どもが影響を受けている、などといったことで困っていませんか。
配偶者が病気の時こそ支えていかなければいけない、そう思う気持ちが、かえってあなたを苦しめてきたのではないでしょうか。
もちろん、配偶者がうつ病で苦しんでいる時こそ、家族で支え合い困難を乗り越えていくことは、普通は望ましいことと捉えられますし、うつ病の配偶者からはそのような期待もされるでしょう。しかし、その困難は、今の家族の形のままで、今後、乗り越えられるものなのでしょうか。あるいは、配偶者のうつ病だけが、現在の困難な壁となっているのでしょうか。
あなたの困り事は本当は何なのか、もう一度、よく考えてみてください。
民法770条1項は、裁判上の離婚ができる場合を挙げています。4号は「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」と定めていますが、2項で、「裁判所は、前項第1号から第4号に掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。」と定めていることにも注意が必要です。
うつ病が4号に該当するためには、配偶者が強度の精神病にかかっていること、また、回復の見込みがないことの立証が必要です。さらに、2項を根拠に、強度の精神病で回復の見込みのない場合でも、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方策を講じ、ある程度において、前途にその方途の見込みのついた上でなければ、直ちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚請求を許さないとした最高裁判例があります(最高裁昭和33年7月25日判決、最高裁昭和45年3月12日判決)。そのため、うつ病であることだけで離婚をすることは、通常は難しいでしょう。
他方、民法770条1項5号は、裁判上の離婚ができる場合として、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」を挙げています。ですので、配偶者がうつ病であるということだけではなく、その他の事情をいろいろと併せ、離婚事由の存在を主張、立証していくことが必要となります。
もし、夫又は妻がうつ病の疑いがある場合で、その他の事情もいろいろと検討した上で、このような相手方とは婚姻関係を継続できないと思ったら、弁護士にご相談されることをお勧めします。こんなことで相談しても良いのか迷われる方もおられるかもしれませんが、離婚事由について経験豊富な弁護士に相談しておくことで、今後、ご自分が採るべき方向性について、必要なアドバイスを受けることができます。
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