定年退職を機会に離婚を進めるべきか?!

定年退職を機会に離婚を進めるべきか?!

1 夫の定年退職を機会に離婚したいという、妻からの相談が増えています。

夫が定年退職をする、ということは、夫が会社に行かずにずっと家にいるということ、これを恐怖に感じる妻からの相談が増えているのです。

他方、夫からの相談では、妻から突然離婚を切り出されて戸惑っている、という内容の相談が多い印象です。

2 なぜ、夫の定年退職で、妻はこれを機会に離婚しようと考えるのでしょうか。

多くの相談者の方々は、それまで、夫のモラハラや、暴言・暴力、ケースによっては夫の不貞を我慢してきたといいます。とても婚姻関係を継続できないと思われるようなことがあっても、子どもが成人するまで我慢する、夫が稼いでいるうちは経済的な理由から我慢する、そのように我慢を重ねながら日々過ごしてきたといいます。これらの我慢も、夫が日中、家にいないからできること。夫が定年退職を迎えるということは、夫が今後、24時間家にいることを意味します。このような生活は耐えられない、だから、これを機会に離婚を考えるのです。

3 また、経済的な理由からも、定年退職は離婚のきっかけになりえます。

これまで、夫の収入に頼っていた専業主婦の妻からすれば、夫が稼がなくなるのであれば、夫の収入を頼りにすることができません。年金か、パートか、それまで貯めてきた財産の切り崩しか。いずれにせよ、夫と一緒にいる経済的な意味が、退職前と比べて、格段に落ちてしまうのです。離婚すれば、年金分割の制度により、婚姻期間中の年金を公的に分割してもらうことができます。特に、夫が家計を管理しているような家庭であれば、妻からすれば、離婚した方が自由に使えるお金も増え、経済的にもメリットがあるともいえます。まして、夫の退職金が何千万円か支給されるのであれば、夫が使い込んでしまう前に、離婚に伴う財産分与できちんと分けてもらう方が良いと考えることもできるでしょう。

4 他方、夫側からすると、これまで長年会社勤めをし、ようやく定年退職になり、家でゆっくり過ごしたい、と思っておられる方が多いのではないでしょうか。

もちろん、中には、定年退職後に第2の人生をと考え、離婚を希望される男性もおられます。もっともこのような方は、定年退職よりもっと以前から、妻との離婚を希望されていたと思われるケースが多いように思います。

夫の思う「家でゆっくり」ですが、家事を担う妻の負担を増大させる、ということになっていることがほとんどです。「これまで家族のために働いてくれてありがとう。」「定年後は家でゆっくりしてね。」、そのような優しい言葉や態度を求めておられる方も多いことでしょう。ところが、妻の方は、長年ためてきた不満を、最終的に離婚という形で終わらせる、ということを考えているかもしれないのです。

日本は、社会構造上、男性の収入は嵩上げされており、女性と比べて明らかに多くの収入を得ることが可能な社会であるといわれています。男性は、その高い収入をもって、外でも内でもいわゆる力を振るうことが可能でした(もちろん、そのような力を振るう人もいれば、振るわない人もいます。)。

では、定年退職後は、どうでしょうか?

5 定年退職を機会に離婚すべきかどうか判断するためには、それぞれのメリット、デメリットを知っておくことも大切です。

【メリット】

  • 自由な生活
  • 配偶者に束縛されない生活ができます。これを機会に、第2の人生で、自分の好きなことをするのも良いでしょう。

  • 自分でお金を好きに使える。
  • 配偶者に気を遣わないで、自分の自由にお金が使えます。

  • 配偶者のための家事の負担がなくなる。
  • 特に専業主婦の妻にとっては、大きな負担が減ります。

  • 配偶者の親の介護の負担から免れる。
  • これも、実際によくある事柄です。

【デメリット】

  • 生活レベルが落ちる。
  • 本来、夫婦二人で生活した方が経済的です。離婚するということは、一つの世帯での生活を二つに分けるということですから、生活レベルは落ちることになります。もっとも、家計を一方が完全に管理しているような家庭では、管理していなかった方は、離婚後は自分の自由にお金が使えるようになり、個人として考えれば経済的にメリットがあることもあります。

  • 一人の生活に孤独を感じる。
  • 病気になったときの不安などもあるでしょう。

  • 親の介護に困る。
  • 親の介護を一方配偶者に任せるつもりであった人からすれば、困った事態になります。

6 弁護士に相談を!

弁護士は、定年退職を機会に別居、離婚したい、と考えておられる方、あるいは、離婚を切り出された方のご相談をお聞きしています。

別居、離婚について迷っている場合でも、ご相談いただければ、今後、ご自身がどのような道を選ぶのが良いのか、いろいろと参考になることでしょう。

別居、離婚するかどうかに拘わらず、ぜひ一度、弁護士にご相談ください!

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