当事務所のトピックス&ニュース 「離婚」
【厚生労働省 離婚時の年金分割 請求期限を5年に延長へ】
改正民法の成立を受け,厚生労働省は,厚生年金に加入していた夫婦が離婚した際,それまでに納付した保険料の記録を双方で分割できる制度について,離婚成立から2年としていた請求の期限を,5年に延長する方針を固めました。
厚生労働省は,ほかの年金制度の改正と合わせて来年の通常国会に必要な法案を提出したいとしています。
【同性婚認めない規定「違憲」との判決がありました】
民法や戸籍法の規定が同性婚を認めないのは憲法違反だとして同性カップルら7人が国を訴えた訴訟の控訴審判決が東京高裁で30日にありました。
裁判長は規定について「性的指向により法的な差別的取り扱いをするものだ」とし,「法の下の平等」を保障した憲法14条と婚姻や家族に関わる法整備のあり方を定めた憲法24条2項に反して「違憲」と判断しました。訴訟は全国5地裁で計6件起こされ,高裁判決は2件目です。3月の札幌高裁も違憲と判断しています。
【国連が選択的夫婦別姓など要請】
女性の人権に関する「世界の憲法」とも呼ばれる女性差別撤廃条約にもとづき,国連の女性差別撤廃委員会は今月,日本政府によるジェンダー平等への取り組みを8年ぶりに審査し,改善のための勧告を行います。
選択的夫婦別姓の導入や,個人通報制度を定めた選択議定書の批准について改めて要請するとみられています。
【女性候補最多314人】
今回の衆院選に立候補した女性は314人で,全候補者に占める割合は23.4%となり,女性候補者数,女性比率とともに戦後最高を記録しました。
しかし,国政選挙の候補者に占める女性割合を2025年に35%にするという政府の目標には及びませんでした。
【選択的夫婦別姓 石破氏に「期待」】
経団連は,1日,選択的夫婦別姓制度の早期実現を求めるシンポジウムを東京都内で開きました。
導入に前向きな石破茂氏が新首相に就いたことで実現を期待する声が出ました。
経団連は通称使用ではビジネスの現場で弊害が出ているとして制度の導入を政府に提言していました。
経団連のダイバーシティ推進委員長はシンポで,石破氏が「(別姓制度を)やらない理由が分からない」と述べたことを評価し,「早期に国会で議論され,成立することを私たちは期待している」と語りました。
【性別不合に関する診断と治療のガイドライン】が改訂されました。
日本精神神経学会の性別不合に関する委員会と日本GI(性別不合)学会が,本年8月29日に,性別不合に関する診断と治療の第度ライン第5版を公表しました。
主な改訂点は,
①診断基準の改訂(DSM-5、ICD-11)への対応
②小児期における割り当てられた性への違和感に対する評価と対応
③精神科医療の関わりに関する改訂
④ホルモン療法および二次性徴抑制療法における使用薬剤と用量用法の追加
⑤二次性徴抑制療法に関する改訂
です。
改訂前は,診断を行う医師について,「十分な理解と経験をもつ精神科医」「1名はG1学会認定医であること」と記載されていました。
改訂後は,関係学会の「ワークショップおよび研修会を受講していることが望ましい」「戸籍の性別変更を行う際は,日本GI学会認定医またはそれに準じた精神科医2名の診断が一致することが求められる」とされています。
【2022年の熟年離婚の割合が過去最高になりました。】
厚生労働省の2022年の人口動態統計によると,離婚の全体件数は17万9099組で減少傾向にあります。他方,同居期間20年以上の夫婦の離婚は3万8991組と,この20年以上,高止まりしています。
2022年に離婚した夫婦のうち,同居期間が20年以上の熟年離婚の割合は23.5%で,1947年以降で最高でした。
夏季休業のお知らせ
弊事務所の令和6(2024)年夏季休業日は,8月10日(土)~8月18日(日)です。令和6(2024)年8月19日(月)から,通常業務となります。
また,上記期間中に,メールにてお問い合わせいただいた場合も,弊事務所からのご連絡は,8月19日(月) 以降,順次となりますので,予めご了承ください。
【「共同親権導入」へ,法務省が初の連絡会議】
離婚後も父と母の双方が子どもの親権を持つ「共同親権」の導入を柱とした改正民法などの成立を受け,法務省は,関係府省庁の連絡会議を初めて開き,制度を円滑に運用するため周知や広報のあり方を検討することなどを確認しました。
この制度が2年後に始まることから,法務省は,こども家庭庁や文部科学省,厚生労働省などの連絡会議を設け,今月8日,初会合を開きました。
【性的マイノリティ―の人々に関連した最高裁判決】
本年6月21日,最高裁は,男性から性別を変えた女性と,自分の凍結精子を使って生まれた次女との間に,法律上の親子関係を認める判断を示しました。最高裁は,子の福祉や利益から,本ケースで法的関係を認めないと,子どもは血縁上の父から扶養を受ける権利がなく,相続人にもなれない点を考慮しています。また,父を男性に限るとの規定もなく,子どもは血縁上の父親に対し,戸籍上の性別にかかわらず認知を求めることができると判断しました。
また別の最高裁判例ですが,本年3月26日に,同性パートナーが,犯罪被害者等給付金支給法に基づく遺族給付を受けられるとの判断を示しました。
【大学で女子枠を設ける動きが広がっています。】
2024年の入試では,東工大や金沢大の国立9校を含む合計25校が女子枠を設けました。2025年度より神戸大が女子枠を設けます。2026年春入学分からは京都大学が理系2学部で女子枠を39人分を,大阪大学が基礎工学部で女子枠を設けるとしています。
国公立大学の理工系の学部で,女子枠を設ける動きが広がっており,このようなジェンダー不均衡を解消するための具体的な取り組みがなされるようになってきました。
【子どもへの性暴力 データベースが開始しています】
こども家庭庁は,こどもへのわいせつ行為や盗撮など,児童生徒性暴力等の行為をして保育士の登録を取り消された人の名前を,保育施設が照会できるデータベースの運用を,2024年4月から始めています。
刑事処分とならなかった場合でも,都道府県がわいせつ行為と認定し,取り消した場合も含まれます。
保育士の登録は,一度取り消されても,最短,3年が経過すれば,再登録が可能です。
わいせつ行為で教員免許を失効した元教員らのデータベースは,2023年度より,文部科学省が運用しています。
【子どもの貧困対策法の改正案が今国会に超党派議員により提出される見込みです】
子どもの貧困対策の推進に関する法律は,平成25年6月に成立し,平成26年1月に施行されました。この法律は,子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう,貧困の状況にある子供が健やかに育成される環境を整備するとともに,教育の機会均等を図ることを目的としています。
令和1年6月に,子どもの「将来」だけでなく「現在」の生活等に向けても貧困対策を総合的に推進することなど,法律の目的・基本理念が充実する内容の改正がなされました。
今回,超党派の議員連盟が議員立法で改正する方針です。改正案の主な内容は,次のとおりです。
・「貧困の解消」を法律名に明記
・離婚後のひとり親が受け取る養育費の指標など加える
・目的や基本理念にも「現在の貧困を解消することをもって、将来の貧困を予防することに資すること」といった内容を入れる。
・民間団体の支援活動を財政的に支え,貧困実態の調査研究成果の活用を進めるよう明示する。
【令和6年4月1日より,奈良県で,パートナーシップ制度が導入されました】
奈良県は,性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性が尊重され,全ての人が自分らしく生きることができる社会の実現を目指し,様々な性的指向やジェンダーアイデンティティの人たちの生活上の障壁をなくすため,令和6年4月1日から「奈良県パートナーシップ制度」を導入しました。
パートナーシップ関係とは,少なくともいずれか一方が,性的指向が必ずしも異性愛のみではない者又はジェンダーアイデンティティが出生時の性と異なるお二人が,互いを人生のパートナーとし,日常の生活において相互に協力し合うことを約した関係を指します。
これまで,奈良県内では6市町村が同様の制度を導入していましたが,奈良県の導入により,奈良県内全域にパートナーシップ制度が導入されることになりました。
【令和6年4月1日より,改正民法施行により,再婚後に生まれた子の父は「現夫」となりました。】
令和6年4月1日より,改正民法が施行され,離婚後300日以内に生まれた子の父を「前夫」とする規定が変更され,再婚後に生まれた子の父は「現夫」となりました。母が再婚しなければ,この規定の適用はありません。令和6年4月1日以降に生まれた子に適用されます。
女性に設けられていた再婚禁止期間100日も廃止されました。
また,嫡出否認の手続きの申立人や期間も拡大されました。
【令和6年4月1日から,日本弁護士連合会の会長に,渕上玲子氏が就任しました。女性初です。】
令和6年4月1日より,日本弁護士連合会の会長に,女性初で,渕上玲子氏が就任しました。
初の女性弁護士誕生は1940年,女性の裁判官,検察官は1949年です。近年,裁判官,検察官,弁護士の女性割合は28%,27%,19%で,弁護士が最も低いです。もっとも,企業内弁護士でみると,女性は4割を超えています。
最近は,共同親権,性的マイノリティ―の問題など,家族や性のあり方をめぐる問題が重要になってきています。
あらゆる性の人々が,司法に関わることが望ましいと考えます。
【2022年家裁に面会交流調停申し立て1万2876件】
全国の家裁が2022年に受けた新規の面会交流調停の申し立ては1万2876件,面会交流が民法で位置づけられる前年の2011年と比べ,約1.5倍です。
今国会に,祖父母やきょうだいが申し立てられるようにする民法改正案が出ており,成立すればさらに増える可能性があります。
支援団体が増えることを求められる一方,法務省がホームページで公開する団体は全国で57にとどまっています。
【「共同親権」衆院可決へ】
離婚後に父母いずれかが親権者になる現行の「単独親権」に加え,双方による「共同親権」を可能とする民法などの改正案をめぐり,自民,公明,立憲民主,日本維新の会の4党が共同提出した修正案が12日,衆院法務委員会で賛成多数で可決されました。
法案は来週にも衆院本会議で可決される見通しです。
改正案が成立すれば離婚後の親権のあり方が77年ぶりに見直されることになります。
【札幌高裁が,同性婚を認めないのは違憲と判断しました】
同性婚を認めていない民法などの規定は憲法に違反するとして,北海道内の同性カップル3組が国を訴えた訴訟の控訴審判決が,14日,札幌高裁でありました。
判決は,規定は「婚姻の自由」を定めた憲法24条1項などに反して「違憲」と判断し,同項は「同性婚をも保障すると解される」としました。
【共同親権の導入を柱とした民法等の改正案が,2024年3月8日に国会に提出されました。】
改正案は,協議離婚の場合,共同親権か,単独親権かを父母の話し合いで決めることとしています。父母の話し合いがまとまらない場合には,裁判所が判断します。改正法施行前に離婚が成立していても,裁判所に親権変更の申立をして認められれば,単独親権から共同親権に変更が可能です。
DVや虐待のおそれから単独親権がどの程度認められるのか,共同親権の場合でも単独で親権を行使できる場合はどのような場合か,など,課題は大きいといえます。また,家庭裁判所の態勢が十分ではないといった指摘もあります。
改正案には,共同親権のほか,法定養育費の制度が盛り込まれています。
この法案が通れば,交付から2年以内に施行されます。
【2024年3月8日,夫婦別姓が選択できない民法や戸籍法の規定は違憲であるとして,選択的夫婦別姓制度の実現を求める3度目の集団訴訟が提起されました。】
選択的夫婦別姓制度の実現を求める集団訴訟は,今回で3度目になります。1回目と2回目は,2015年と2021年に,最高裁が合憲と判断しました。経済同友会や経団連も政府に導入を要望しており,世論は確実に夫婦別姓を認める方向へ変化してきています。
【2024年3月4日,世界銀行は3月8日の国際女性デーを前に,報告書を発表,日本の男女格差は世界73位で,主要先進国では最大の格差となりました。】
報告書では,日本の法制度が男性に与える権利を100としたとき,日本の女性は72.5%しか法的な保護を与えられないとされました。DVやセクハラに対する十分な保護がなされていないと判断されています。今回の調査の首位はイタリアでした。
【2023年に生まれた子どもの数は,75万8631人で,過去最少となりました。】
厚生労働省が2024年2月27日に公表した人口動態統計で,出生数が,前年より4万1097人減り,75万人台となりました。2023年の婚姻数は,前年と比べ3万0542組減り,48万9281組となりました。婚姻数が50万組を下回るのは,1933年以来です。
【奈良県予算案,教育・子育て支援に力】
奈良県は2月20日,総額5440億円の2014年度一般会計当初予算案を発表しました。
教育・子育て支援の新事業を盛り込むとともに,大型公共事業などの見直しを具体的に進めていく予算編成となりました。
【子ども大綱】
昨年12月22日,「子ども大綱」が閣議決定されました。
「こども大綱」は,2023年4月に施行された「こども基本法」に基づきます。
「こども大綱」では、全てのこども・若者が身体的・精神的・社会的に幸せな状態(ウェルビーイング)で生活を送ることができる「こどもまんなか社会」の実現を目指しています。
基本的な方針で,
①こども・若者は権利の主体であり,今とこれからの最善の利益を図ること
②こども・若者や子育て当事者とともに進めていくこと
③ライフステージに応じて切れ目なく十分に支援すること
④良好な成育環境を確保し、貧困と格差の解消を図ること、
⑤若い世代の生活の基盤の安定を確保し,若い世代の視点に立った結婚・子育ての希望を実現すること
⑥施策の総合性を確保すること
が掲げられています。
【犯罪被害者給付金における同性パートナーの除外について,最高裁が今年3月に弁論を開く予定です】
犯罪被害者等給付金支給法に基づき遺族に支払われる給付を,同性パートナーも受給できるかについて争われている裁判で,最高裁が本年3月に弁論を開くことを決めました。一審,二審は,同性パートナーである原告の請求を棄却しています。
【ヤングケアラーを支援対象とするため,子ども・若者育成支援推進法の改正案が本年の通常国会に提出される見込みです】
子ども家庭庁の部会で,ヤングケアラーは,「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義されました。18歳未満の子どもだけではなく,18歳以上の若者も対象に含まれます。
本年の通常国会に,「子ども・若者育成支援推進法」の改正案が提出される見込みです。
【昨年12月22日,政府は,「こども未来戦略」を閣議決定しました】
昨年6月13日に「こども未来戦略方針」が閣議決定されました。この中で,「子ども・子育て施策の基本的考え方」について,次のように記載されています。
・少子化は我が国が直面する最大の危機
・2022年に生まれた子どもの数は77万747人で,統計を開始した1899年からみて最低となっている。
・少子化のスピードが加速。出生数が初めて100万人を割り込んだのは2016年だったが,2019年に90万人,2022年に80万人を割り込んだ。このままでいくと,2060年近くには50万人を割り込むことが予想される。
・若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが,こうした状況を反転させることができるかどうかの重要な分岐点
具体化に向けた検討がなされ,昨年12月22日,「こども未来戦略」が閣議決定されました。
その中の一つが,児童手当の拡充です。
児童手当は,2024年10月分以降,支給対象を高校生年代(18歳到達後の最初の年度末)までに拡充。所得制限を撤廃し,第3子以降の手当月額を3万円に増額する。多子加算のカウント方法は、現在の高校生年代までの扱いを見直し,大学生に限らず,22歳年度末までの上の子について,親などに経済的負担がある場合をカウント対象とする,という方向で検討されています。
また,もう一つ,目玉として挙げられているのが,多子世帯(扶養する子供が3人以上の世帯)の大学・短大・高専(4~5年生)・専門学校の授業料・入学金の無償化です。2025年度から所得制限を設けず無償とする措置を講じ,支援の上限は,大学の場合で授業料が国公立約54万円,私立約70万円,入学金が国公立約28万円,私立約26万円で,対象学生に係る学業の要件について必要な見直しを図ることを含め,早急に具体化するとされています。
授業料等減免および給付型奨学金については,2024年度から,多子世帯や理工農系学生などの中間層(世帯年収約600万円)に拡大する方向で検討されています。
なお,財源の確保については,社会保障の公費節減で1.1兆円,社会保険制度を通じて拠出する支援金制度の創設で1.0兆円,既定予算の最大限の活用などで1.5兆円とし,実質的な負担が生じないようにするとされています。
【出生数 最小72万6千人】
2023年に国内で生まれた日本人の子どもは,推計で72万6千人程度になることがわかりました。
22年の確定数は77万750人で,5.8%程度減る見通しです。
22年は前年比5.0%減りましたが,減少幅はさらに広がることになります。
政府も危機感を強めており,2030年までが「少子化傾向を反転できるかのラストチャンス」と指摘し,22日に児童手当の拡充などを盛り込んだ年3.6兆円規模の少子化対策「こどもみらい戦略」を閣議決定しました。
来年度から3年間で充実策の大半を実施する方針です。
年末年始休業について
弊事務所の令和5年(2023)年冬季休業日は,令和5年12月29日(金)~令和6年1月8日(祝・月)です。令和6年(2024年)1月9日(火)から,通常業務となります。
また,上記期間中に,メールにてお問い合わせいただいた場合も,弊事務所からのご連絡は,1月9日(火) 以降,順次となりますので,予めご了承ください。
【性同一性障害特例法について,最高裁は,手術要件の一部を憲法違反と判断しました。】
2023年10月25日,最高裁大法廷は,性同一性障害特例法の戸籍上の性別変更に生殖能力を失わせる手術を求める要件は,憲法13条の憲法が保障する意思に反して体を傷つけられない自由を制約し,結果,当事者は強度の身体的侵襲である手術を受けるか性自認に従った扱いを受ける重要な法的利益を放棄するか,という過酷な二者択一を迫られているとし,その制約の程度は重大で,要件は憲法13条に違反し無効であると裁判官15人全員一致で判断しました。
他方,変更する性別の性器に似た外観を備えていることを求める要件は,高裁が判断しておらず,審理を高裁に差し戻しました。なお,差戻は12人の多数意見ですが,3人の反対意見(違憲,高裁に差し戻さず申立人の性別変更を認めるべき)がありました。
裁判所は,生殖機能要件がなかったとしても親子関係の問題が生じることは極めてまれだとしています。また,特例法が2004年に施行されて今日まで1万人以上の人が性別変更をしており,社会の理解も広まりつつある中,女である父や男である母が存在することになっても社会が急激に変化するとまでは言い難いとしています。医学的知見が進んでいることも考慮され,どのような治療を必要とするかは患者によって異なり,手術を受けたかどうかによって決まるものではない,要件を課すことには医学的に合理性がない,としています。
【子ども家庭庁は,保育所や認定こども園などの職員による虐待について,発見した人に通報義務を課す法改正を検討しています】
本年11月7日のこども家庭審議会の委員会で,こども家庭庁は,今後,児童福祉法を改正し,児童養護施設等と同じように,保育所や認定こども園などの職員による虐待について発見した人に通報義務を課す制度を導入する方向であることを明らかにしました。
近年,保育所等の不適切保育が問題となっていますが,子ども家庭庁では,ガイドラインの策定や,保育現場の負担軽減等も併せて検討されています。
【文科省が「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」をまとめました】
文科省は10月,「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」をまとめました。
子どものSOSを早くつかむため,心身の異変を察知するアプリや1人1台端末を使った相談窓口を整備するとのことです。
全国で起きた重大事態報告書を集めて専門家と原因や背景を分析するほか,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの配置も充実させる方針です。
【共同親権について,法務省の諮問機関である法制審議会は本年8月にたたき台を示し,現在,法務省では,要綱案のとりまとめに向けて進んでいます】
法制審議会の部会は,2022年11月の中間試案で,共同親権と単独親権を併記していました。2023年4月,共同親権を導入する方向で検討する方針を確認した。
共同親権の行使について,原則として父母が共同して親権を行使しますが,例外事情がある場合には,単独で行使できるとしています。また,身上監護のうち日常的な事柄については,単独で行使できるとしています。
【2023年1月~6月の出生数】
今年1~6月の上半期に生まれた子どもの数は,2000年以降で過去最少の37万1052人となりました。2022年の1年間に生まれた子どもの数は77万747人で,1899年以降,初めて80万人未満となりましたが,このペースで行けば,今年も同様に80万人未満となりそうです。
婚姻数は,前年同時期の7.3%減の24万6332組です。
【トランスジェンダーの戸籍上の性別を変えるための,手術要件】
トランスジェンダーが戸籍上の性別を変えるには生殖能力を失わせる手術が必要と定めた「性同一性障害特例法」の規定が憲法に違反するかどうかについて,静岡家裁浜松支部は,本年10月11日,憲法13条に反し無効との判決を出しました。
同種事件で,現在,最高裁に係属しており,最高裁大法廷は,今月18日,今月25日に決定を出すと決めました。
2019年,最高裁第2小法廷は,本規定を合憲としましたが,今回は最高裁大法廷が判断を示します。
【埼玉県の子ども放置禁止条例案の撤回】
埼玉県は,10月4日,県議会に「埼玉県虐待禁止条例改正案」を提出していました。この改正案は,成人の「養護者」が小学3年生以下の子どもを自宅などに放置することを禁じ,県民に通報を義務付ける内容でした。10月6日の県議会の委員会で,自民県議は,子どもだけでの登下校や短時間の留守番も「放置」にあたり,虐待とみなすと答弁し,他会派から反対の声があがったものの,委員会で可決されました。その後,県内外で,ほとんどの保護者が条例違反に当てはまると講義の声があがり,撤回となりました。
私見ですが,この条例改正案が,本当に子どものことを考えた改正案だったのか,疑問に感じます。
【大淀町と旅行会社が連携協定を締結しました】
大淀町と「東武トップツアーズ」が9月19日,子育て支援をはじめとする10項目にわたる包括連携協定を結びました。
同社は奈良市にも支店を置く全国規模の会社で,同社は町が進めている「おおよどこども未来プロジェクト」に賛同し,昨年度に企業版ふるさと納税制度を活用して300万円を町に寄付しています。
同社は協定に基づき,大淀病院跡地に建設予定の子育て支援拠点施設のオープニングイベントの総合アドバイザーになる予定です。
【性被害を受けた男性や男児対象の相談窓口新設】
本年7月,政府は,子どもや若者の性被害に対応するため,緊急対策パッケージをまとめました。
男性や男児対象の電話相談窓口を今月中に初めて設置する予定です。
また,文化芸術分野の関係者に向けた相談窓口も設けられます。
また本年7月13日,性犯罪に関する規定を見直した改正刑法が施行されました。改正の主な内容は次のとおりです。
①強制性交罪と準強制性交罪を統合し,要件が明確化されました。
②公訴時効が5年延長されました。
不同意性交罪は15年,不同意わいせつ罪は12年になりました。
③性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられました。
④わいせつ目的要求罪が新設されました。
わいせつ目的で16歳未満の子どもを懐柔し,面会を求める行為等が処罰されます。
⑤新たに「性的姿態撮影等処罰法」が施行されました。
性的な部位を盗撮したり,画像を提供したりする行為が処罰されます。
【本年7月13日に改正刑法が施行されました】
本年7月13日,性犯罪に関する規定を見直した改正刑法が施行されました。
改正の主な内容は次のとおりです。
①強制性交罪と準強制性交罪を統合し,要件が明確化されました。
②公訴時効が5年延長されました。
不同意性交罪は15年,不同意わいせつ罪は12年になりました。
③性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられました。
④わいせつ目的要求罪が新設されました。
わいせつ目的で16歳未満の子どもを懐柔し,面会を求める行為等が処罰されます。
⑤新たに「性的姿態撮影等処罰法」が施行されました。
性的な部位を盗撮したり,画像を提供したりする行為が処罰されます。
【昨年度の育児休業取得率】
厚生労働省によると,昨年,育児休業をとった男性の割合が17.13%と,過去最高になりました。前年度から比べると,3.16%,上昇しています。
なお,政府目標は,2025年度までに50パーセントです。
女性の取得率は全体で80.2%でした。前年度から4.9%下降しました。
【橿原市の4歳女児が死亡した事件の奈良県の対応】
奈良県は,橿原市の4歳女児が死亡した事件について,奈良県の児童相談所や橿原市の対応について検証する専門家チームを橿原市と共同で立ち上げると表明しました。
検証チームの設置は10月1日を予定しています。検証チームのメンバーは,奈良県内の弁護士や有識者ら5人で構成されます。
検証結果は,専門家らで構成する「県子どもを虐待から守る審議会」の意見も踏まえたうえで,奈良県と橿原市に報告されます。
奈良県内の児童虐待について,2022年度の対応件数は,前年度より10.8%減少しています。もっとも,支援対象の児童数は増加傾向にあり,2022年度は,6591人で過去最多を更新しました。
【LGBT理解増進法が,本年6月16日に成立し,同月23日より施行されています】
LGBT理解増進法は,性的指向やジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないとし,性的マイノリティへの理解増進について,国や自治体,事業主や学校などに対し,施策策定や普及啓発、環境整備などの努力義務を定めました。また,国が基本計画の策定や施策の総合的かつ効果的な推進を図るための連絡調整を行うことも定められています。
もっとも,この法律は差別禁止法ではなく,理念法であるため,罰則規定はありません。
3年を目途に見直しが検討されます。
【本年7月11日,最高裁は,トランスジェンダーの職員が女性トイレの使用を不当に制限されたのは違法だと国を訴えた裁判で,訴えを認め,違法とする判決を言い渡しました】
性的マイノリティ―の職場環境に関する初めての最高裁判断となります。
この職員は50代です。職員は,健康上の理由から,戸籍上の性別変更に必要な性別適合手術は受けていませんが,女性ホルモン投与を受けています。2010年から女性の服装で働いています。職員は,女性トイレの使用も望みましたが,経産省は,勤務フロアから2階以上離れた女性トイレの使用を求めました。
職員は制限を撤廃するよう人事院に行政措置要求をしましたが,2015年に退けられています。
裁判所は,職員が,女性トイレを使い始めてからトラブルはなく,明確に異を唱える同僚もいなかったと指摘し,その上で,人事院の判定は,他の職員へ配慮を過度に重視する一方,職員が使用制限で受ける日常的な不利益を不当に軽視するもので,著しく妥当性を欠く,と判断しました。
【性的マイノリティ―に関する全国の大学等への調査結果】
日本学生支援機構が全国1182の大学,短大,高校専門学校を対象に行った2021年度の調査では,性的少数者への対応の全学的な方針を定めていると回答したのは,全大学の15.3%でした。2019年度から7.6ポイントの増加となります。
具体的な取り組みとしては,バリアフリートイレの利用を案内する(43.2%),授業や窓口対応における呼称は,当事者の要望に沿ったものを使用する(34.6%),名簿等において,自認する性に基づく通称名を使用する(28.3%)などが挙げられています。
令和5年夏季休業のお知らせ
弊事務所の令和5年(2023)年夏季休業日は,8月11日(金・祝)~8月20日(日)です。令和5年(2023)年8月21日(月)から,通常業務となります。
また,上記期間中に,メールにてお問い合わせいただいた場合も,弊事務所からのご連絡は,8月21日(月)以降,順次となりますので,予めご了承ください。
【本年7月4日,厚生労働省は,2022年国民生活基礎調査の結果を公表しました】
各世帯の平均所得額は,全世帯平均が545万7000円,高齢者世帯平均が318万3000円,高齢者世帯以外の世帯平均が665万円,児童のいる世帯平均が785万円でした。中央値は,423万円です。平均所得金額545万7000円以下の割合は61.6%となっており,高額所得者世帯が平均を押し上げていることが分かります。
貯蓄がある世帯は82.4%で,一世帯あたり平均貯蓄額は1368万3000円です。借入金があるは23.7%で,一世帯当たりの平均借入額は390万6000円です。また,児童のいる世帯では,「借入金がある」は55.7%で,一世帯当たり平均借入額は1185万1000円となっています。
2021年の貧困線(等価か処分所得の中央値の半分)は127万円で,相対的貧困率(貧困線に満たない世帯員の割合)は15.4%でした。
このうち,こどもの貧困率(17歳以下)は11.5%で,2018年と比べ2.5%改善しました。もっとも,大人が一人の世帯員では,44.5%で,2018年と比べ3.8%改善したものの,まだまだ高い状況です。
生活意識調査では,苦しい(「大変苦しい」「やや苦しい」)が51.3%ですが,母子世帯でみると75.2%,児童のいる世帯でみると54.7%です。母子世帯,子育て世帯の負担感が表れています。
【日本産婦人科学会は,生殖補助医療法の改正案について議論する議員連盟で,精子や卵子の提供時に匿名にするか否か選択肢をドナーに与えるべき,との考えを示しました。】
現在は,精子や卵子のドナーは原則匿名です。第三者の精子を子宮内に注入する人工授精(AID)によって,国内では1~2万人の子どもが生まれたと言われています。近年,「出自を知る権利」の重要性に対する認識が高まっています。
【持続可能な開発ソリューション・ネットワークが発表したSDGs報告書で,日本は順位を下げ21位となりました。】
国連と連携している国際組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」は,今月,SDGsの達成状況などをまとめた報告書を,発表しました。166か国の達成度ランキングで,フィンランドが3年連続1位でした。日本は,昨年は19位でしたが,今回は21位となりました。
日本は,ジェンダー平等,つくる責任つかう責任,気候変動対策,海の環境保全,陸の環境保全の5つが,最低評価でした。
【2023年版 ジェンダーギャップ報告書」で,日本は146か国中125位,2006年の発表開始以来,最低となりました。】
世界経済フォーラム(WEF)は,6月21日,世界各国の政治や経済などの男女平等度合を指数化した2023年版「ジェンダーギャップ報告書」を,発表しました。日本は,昨年は116位でしたが,今年は146か国中125位で,過去最低の順位となりました。1位はアイスランド,2位はノルウェー,3位はフィンランドです。アメリカは43位,韓国105位,中国107位で,日本よりも上位です。146位の最下位はアフガニスタンでした。
教育,健康,政治,経済の4分野の分析がなされ,日本の達成率は64.7%と評価されています。分野別にみると,政治の達成率は5.7%(世界138位),経済の達成率は56.1%(世界123位)と,低迷しています。
【奈良弁護士会で6月29日(木)に「女性の権利ホットライン」(無料電話相談)を実施します!】
6月29日(木)10時~16時に,奈良弁護士会が,「女性の権利ホットライン」(無料電話相談)を実施します。電話番号は,0742-22-3371です。ジェンダー問題に詳しい奈良弁護士会所属の弁護士が対応します。(当事務所の弁護士も女性の権利ホットラインに参加します。)DV,労働問題,ジェンダー差別,どのようなことでも,身の回りのことで聞きたいことがあれば,ぜひお電話してください!
【本年6月5日,政府の男女共同参画会議で,「女性活躍・男女共同参画の重点方針」の原案が示され,プライム企業の女性役員の比率を2030年までに30%以上とする目標が掲げられました!】
本年6月5日,政府の男女共同参画会議で,「女性活躍・男女共同参画の重点方針」の原案が示されました。概要は次のとおりです。
Ⅰ 女性活躍と経済成長の好循環の実現に向けた取り組み
①東証プライム市場上場企業を対象とした女性役員比率に係る数値目標の設定等
2025年をめどに,女性役員を一人以上選任する。
2030年までに,女性役員比率を30%以上にする。
その他の取組支援
②女性起業家の育成・支援
・女性起業家の集中支援プログラムで,女性の割合を20%にする。
Ⅱ 女性の所得向上・経済的自立に向けた取り組み強化
・2歳未満の子を持つ親の時短勤務の活用を促すため,給付金制度を創設する。
・男女間の賃金格差の情報開示について,対象企業を拡大
Ⅲ 女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現
・配偶者暴力防止法改正法の円滑な施行(令和6年4月)に向けた環境整備
・性犯罪,性暴力対策の強化
・困難な問題を抱える女性への支援に関する法律の円滑な施行(令和6年4月)に向けた支援体制の整備
・その他
なお,東証プライム上場企業全体で昨年の女性役員比率は11.4%。30%以上は2.2%とのこと。
内閣府によると,2022年の女性役員比率はフランス45.2%,イギリス40.9%,ドイツ37.2%,アメリカ31.3%で,日本は大きく立ち遅れています。
【2022年の出生数は77万人で,1899年以降最少となりました。】
厚生労働省は,今月2日,人口動態統計を発表しました。2022年の出生数は77万0747人で統計を始めた1899年以降最少です。また,合計特殊出生率は1.26で,過去最低の水準です。人口維持に必要な出生率は2.06で,遠く及びません。
また,独身の人のうち「結婚したら子どもはもつべきだ」と考える女性は約36.6パーセント,男性は55%です。6年前の調査から,女性は約30%,男性は約20%,減少しました。
有効な少子化対策が望まれています。
【2019年に全国5か所で起こされた同性婚を認めない民法,戸籍法の規定が憲法違反とする地裁の訴訟について,すべての判決が出そろい,2か所は「違憲状態」,2か所は「違憲」,1か所は「合憲」でした。】
2019年に全国5か所の地裁で提起された「結婚の自由をすべての人に」訴訟について,最後の地裁判断となった福岡地裁は,本年6月8日,「違憲状態」と判断し,結論としては合憲としたものの,今後の国会の対応に委ねることが相当と判決しました。
東京,福岡地裁は,違憲状態。札幌,名古屋地裁は,違憲。大阪は合憲と,判断は分かれています。
今後,東京2次訴訟や控訴審が予定されていますが,立法的な解決がなされることが望まれます。
各自治体では,パートナーシップ制度があるところも増えてきていますが,相続や扶養など,法的な家族でないと認められないことも多いのが実状です。
名古屋地裁では,「同性愛者を法律婚制度の利用から排除することで,大きな格差を生じさせ,何ら手当てがなされていないことについて合理性が揺らいできているといわざるを得ず,もはや無視できない」,同性カップルについて「法律婚に付与されている重大な人格的利益から排除されている」と指摘しています。
【LGBT理解増進法案の修正案が,自民公明両党によって,衆議院に提出されました】
本年4月18日,自民公明両党が,議員立法でLGBT理解増進法案の修正案を国会に提出しました。立憲民主,共産,社民の3党は,2年前に作成された法案を対案として提出しました。
今後の国会の行方が注目されます。
【イギリス経済紙エコノミストによる女性の働きやすさランキング 日本はワースト2位】
イギリスの経済紙「エコノミスト」は,本年3月,3月8日の国際女性デ―を前に,主要29か国が対象の女性の働きやすさを評価した2022年ランキングを発表しました。日本は最下位から2番目でした。
同誌は,毎年「国際女性デー」に合わせて経済協力開発機構の加盟国のうち主要な29か国の「女性の働きやすさ」について,男女間の賃金格差,育児休暇,子どもの教育費,管理職や議会の女性比率など10の指標に基づいて評価し,ランキングを発表しています。
日本は、企業の管理職と衆議院の議員の女性の割合が29か国中,最も低いなど、半分以上の指標で平均を下回りました。
女性が最も働きやすい環境だとされたのはアイスランドです。スウェーデンが2位、フィンランドが3位でした。
【法制審議会の部会は,4月18日,共同親権導入の方向で検討することを確認しました】
法制審議会の部会は,2021年3月より,離婚後の子どもの親権について,共同親権か単独親権かなど,議論してきました。今回,4月18日に,共同親権を導入する方向で検討することを確認しました。
共同親権については,家庭内暴力や虐待が続く恐れが指摘されており,このような懸念についても共有され,今後,共同親権の導入を前提に議論がなされる予定です。
【昨年1年間に警察がストーカー規制法違反で摘発した件数が,過去最多となりました。】
昨年1年間に,全国の警察がストーカー規制法で摘発した件数は1028件で,過去最多となりました。ストーカー規制法は,2000年に施行されています。ストーカー規制法以外の,住居侵入,脅迫,迷惑防止条例違反での摘発もあります。
被疑者と加害者がパートナーや交際関係であるケースは半分近くにのぼりますが,他方で,面識がなかったり,加害者を特定できない例も2割近くになります。
被害者の7割強が女性ですが,男性の被害も3割近くにのぼります。
都道府県公安委員会は加害者に禁止命令を出すことができ,2017年からは加害者の聴聞や警告を経ずに緊急禁止命令も出せるようになりました。昨年は,1744件の禁止命令が出され,半数以上が緊急だったとのことです。
加害者に治療やカウンセリングを促す取り組みも行われています。
令和5年のゴールデンウィーク中の業務について
4月29日(祝・土)からのゴールデンウィーク中の業務は,カレンダーどおり日曜・祝日はお休みいたします。5月1日(月)及び2日(火),6日(土)は通常通りの業務となります。
【LGBT理解増進法案をめぐる状況】
LGBT理解増進法案は,正式名称は「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」です。LGBTに関する基礎知識を全国に広げることで国民全体の理解を促すボトムアップ型の法案で,差別禁止法とは異なります。
産経新聞や朝日新聞などの世論調査では,同性婚を法律で認めるべきと考えている人の割合は7割前後と優に5割を超えています。また,産経新聞の調査でLGBT理解増進法案を今国会で成立させるべきと考えている人の割合は6~7割前後となっており,また,朝日新聞の調査でLGBTなど性的少数者に対する差別を禁止する法律をつくるべきと考えている人は約5割となっています。
さらに,理解増進ではなく差別禁止を条例で定める自治体は,1月24日現在で少なくとも63にのぼっています。
【信仰を背景とした虐待について,厚生労働省が昨年末にガイドラインをまとめ,全国の自治体に通知しました】
昨年12月27日に,厚生労働省より全国の自治体に,信仰を背景した虐待についてのガイドラインを通知しました。
厚生労働省は,次のような行為があれば虐待に当たると例示しています。
身体的虐待:宗教活動への参加を体罰で強制
宗教行事中に話を聞いていないなどの理由でたたく
深夜まで宗教活動への参加を強制
心理的虐待:交友や結婚の制限,友人らを「敵」「サタン」と称する
他者の前で宗教信仰を宣言するよう強制
教義を理由に就職,進学を認めない。
性的虐待 :教義と称し,年齢に見合わない性的表現を含む資料を見せる
宗教団体職員らに性経験を話すよう強制
ネグレクト:信仰による高額寄付などで適切な住環境,食事を提供しない
輸血など適切な治療行為を行わない
宗教活動への参加のため養育を怠る
【2022年12月に民法改正法が成立し,再婚禁止期間が撤廃されました】
2022年12月10日に,改正民法が成立しました。2024年夏までに施行されます。
改正民法では,嫡出推定の規定を見直し,再婚後に子どもが生まれた場合の父は現夫となりました。嫡出推定の規定自体は残るため,離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子となるのが原則となり,再婚後に生まれた子どもの場合に例外的に現夫が父となります。
また,女性の100日の再婚禁止期間が,撤廃されました。
嫡出否認の訴えは,これまで原告となることができるのは前夫にかぎられていましたが,改正法では母や子どもにも拡大されました。
親の子に対する「懲戒権」も,改正民法で削除されることになりました。
【奈良県内のDV相談について,2021年度は,奈良県の受付件数は減少,県内市町村は増加しました】
2021年度のドメスティックバイオレンス(DV)の相談受付件数は,奈良県(中央こども家庭相談センター,髙田こども家庭相談センター,女性センターの合計)は767件で減少,奈良県内市町村は814件で増加しました。
奈良県のシェルターで一時保護したのは37名,平均の保護日数は24.68日でした。
【民事判決データベース化に向けた動き】
民事判決情報は、紛争当事者だけでなく,国民や社会全体で共有すべき公共財とも
いうべき重要な資産といわれています。民事訴訟制度のIT化の議論の中で,よ
り多くの民事判決情報を集約し,データベース化することが期待されています。民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議が令和2年3月10日に取りまとめた「民事司法制度改革の推進について」では,「法務省は、民事判決情報を広く国民に
提供することについて、司法府の判断を尊重した上で、ニーズやあい路等につき必要
な検討をする。」とされました。法務省は,「民事判決情報データベース化検討会」を設置し,2022年10月に第1回の会議が開かれました。今年も引き続き,検討会が開かれる予定であり,2025年度の導入が目指されています。
【「家族法制の見直しに関する中間試案」に関する意見募集】
法務省の諮問機関である法制審議会の部会は,2022年11月15日に,家族法制の見直しに関する中間試案を取りまとめました。
この中間試案では,共同親権と原稿の単独親権を維持する案が併記されています。共同親権の場合には,さらに,①共同親権を原則とし,例外を設ける,②単独親権を原則とし,例外を設ける,③原則・例外を設けない,の3案となっています。
また,養育費の支払いや面会交流に関する制度案も記載されています。
パブリックコメントは,2022年12月6日より公募が開始しており,今年2月18日が締め切りです。
【子の引渡し命令の間接強制に関する最高裁判例】
2020年から施行されている改正民事執行法で,子の引き渡しに関する規定が明記されました。2022年11月30日,民事執行法が改正された後,初めての,最高裁判所が間接強制に関する判断が出されました。
間接強制とは,審判,判決等で出された結果に従わない場合に,金銭の支払いを科して,従うよう促す制度です。
今回の最高裁が判断した事案は,夫が長男(9歳)と二男(7歳)を連れて別居し,妻が家裁に子の引渡しの審判を求め,この審判が出されて確定したというケースです。次男は引き渡されましたが,長男が約2時間説得しても応じず,約2か月後の妻との面会でも反発して夫の家に帰りたがりました。一審では引き渡すまで一日2万円の間接強制を認め,二審は明確に拒絶している長男の心身に有害な影響を及ぼさずに引き渡すのは困難であり間接強制は権利の濫用であると判断していました。最高裁は,長男の拒絶は約2か月の間に2回にとどまり,権利の濫用とはいえないとして,高裁判決を破棄し一審判決が確定しました。
【性同一性障害を有する人が,手術を受けずに性別変更を申し立てた家事審判について,最高裁第一小法廷が審理を大法廷に回付しました。改めて最高裁の判断が示される見通しです。】
2004年から施行されている性同一障害特例法は,第三条1項で次のように定めています。
家庭裁判所は,性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて,その者の請求により,性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一 十八歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
このように,現行法は,「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」を性別変更の要件としています。
2019年の最高裁第二小法廷は,変更前の性別で子どもが生まれれば,親子関係の問題や社会の混乱を生じさせかねないとして,その時点では合憲としています。
今回の申立人は,戸籍上は男性だが心は女性という性同一性障害者で,手術を受けずに性別変更を家裁に申し立てました。申立人は,体の危険を伴う外科手術を強制するのは性同一性障害者への不合理な差別であるとして,憲法13条,憲法14条に違反すると主張しています。一審,二審は,申立人の性別変更を認めませんでしたが,改めて最高裁判所の判断が示される見込みです。
年末年始休業について
弊事務所の令和4年(2022年)冬季休業日は,12月29日(木)~1月9日(祝・月)です。令和5年(2023年)1月10日(火)から,通常業務となります。
また,上記期間中に,メールにてお問い合わせいただいた場合も,弊事務所からのご連絡は,1月10日(火) 以降,順次となりますので,予めご了承ください。
【国連の障害者権利委員会が日本政府に対し,2022年9月,旧優生保護法下で不妊手術を強いられた被害者への謝罪などを勧告しました。】
日本は,2014年に障害者権利条約を批准しました。現在,批准国,地域は185です。日本の対面審査は新型コロナの影響もあって延期されてきましたが、今回、初めて行われました。今回の勧告では,旧優生保護法下で不妊手術を強いられた被害者への謝罪や,申請期間を限らない救済などが,指摘されました。
【梅毒感染者が増加しています】
梅毒は,梅毒トレポネーマという細菌が原因の感染症です。主な感染経路は性的な接触で、キスや性行為などで感染が広がります。潜伏期間でも感染者の粘膜や傷のある皮膚に直接触れると感染することがあります。
感染すると概ね次のような経過をたどるとのことです。第1期(感染から3週間程度)3ミリから3センチ程度の潰瘍。数週間で症状が消えることもある。 第2期(感染から3か月程度)全身に赤い発疹。発熱,倦怠感が出ることもある。症状が消えることもある。第3期(感染から3年程度)全身に炎症 第4期(感染から10年程度) 脳,心臓,血管に症状。まひや動脈瘤の症状。
梅毒は治療ができますので,早い段階での治療が大切です。治療法としては抗菌薬があります。症状があってもそれだけで感染を判断することは難しいため,検査のために,泌尿器科,皮膚科,婦人科の受診したほうが良いそうです。
梅毒の感染者は2015年ころから急増しており,今年11月1日には,今年に入ってから初の1万人超となりました。感染者は都市部での報告が多く,男性66%,女性34パーセントです。また,20代35%,30代22%,40代20%です。
【民事裁判の判決のデータベース化に向け,法務省が検討会を設置しました】
全国の地裁,高裁などで出される民事判決は年に約20万件といわれていますが,これまで,多くは外部提供されておらず,数パーセントが民間のデータベース会社や判例雑誌の会社に裁判所等から提供されているに過ぎませんでした。
民事裁判が全面IT化される2025年度の導入が目指されています。
【嫡出推定見直し,懲戒権削除・体罰禁止を盛り込んだ,民法改正案が今月14日に閣議決定されました。】
嫡出推定見直し,懲戒権削除・体罰禁止を盛り込んだ,民法改正案が今月14日に閣議決定されました。今の臨時国会に提出される予定です。
現民法では,婚姻中に妊娠した子は夫の子,離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定されています。この規定により,実際には,夫の子でないのに,嫡出推定により夫の子とされてしまうため,母が子どもの出生届を出さず,子どもが無戸籍となるケースが生じていました。今回の法改正では,300日以内に生まれた子は前夫の子という規定は残るものの,例外的に他の男性と再婚した後に生まれた子は現夫の子とされます。
また,今回の民法改正案では,離婚後100日間の女性の再婚を禁じる規定が廃止されます。
また,虐待の認知件数は毎年増加しており,今回の民法改正案では,懲戒権が削除され,体罰禁止が明記されることになりました。
【2020年の国勢調査 奈良県の女性の就業率】
2020年の国勢調査の集計結果が公表されています。
国勢調査は5年に1回実施されていますが,2020年の結果によると,奈良県の20~64歳女性の就業率は70.6%で,全国最下位でした。なお,2010年では56.5%,2015年では63.6%と,就業率自体は上がってきていますが,全国都道府県の中では,低い状況です。
ちなみに,全国平均は74.9%です。
【母子健康手帳の名称について】
先月,厚生労働省の有識者検討会は,「母子健康手帳」の名称を変えない方針を了承しました。
母子手帳は妊産婦や乳幼児の健康を守るといった目的があり,手帳の内容などは約10年ごとに見直されてきました。
今回は,親子手帳といった名称が良いのではといった提案もありましたが,名称は変えず,別の名称との併記が可能であることをはっきり示すことになりました。
【第16回出生動向基本調査が公表されました。】
本年9月9日,国立社会保障・人口問題研究所は,2021年6月に実施した「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査」の結果の概要をとりまとめ,公表しました。
この調査は5年に1回実施されており,本来でしたら2020年6月に実施する予定でしたが,新型コロナウイルスの影響で1年延期されました。
夫婦調査では,職場や友人を介した恋愛結婚が減少して74.6%となり,SNSやマッチングアプリなどのネットで知り合った夫婦が最近の結婚の13.6%を占めます。
また,妻45~49歳夫婦の最終的な子どもの数は,1.81人に減少しました(前回調査では1.86人)
夫婦の平均予定子どもの数は,横ばいで,2.01人です。
子どもをもつ理由は,「子どもがいると生活が楽しく心が豊かになるから」「結婚して子供を持つことは自然なことだから」「好きな人の子どもを持ちたいから」の順で多く,子どもを持たない理由は,「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」「高年齢で産むのはいやだから」「ほしいけれどもできないから」「これ以上,育児の心理的,肉体的負担に耐えられないから」の順に多くなっています。
不妊の検査・治療を受けたことのある夫婦は18.2%から22.7%(4.4組に1組)に増加しました。
【一般社団法人面会交流支援全国協会(ACCSJ)が,10月から面会交流支援団体を独自に認証する制度を開始します。】
面会交流支援団体は,奈良県には「なら笑みの会」が,大阪府には「FPIC大阪ファミリー相談室」があります。
一般社団法人面会交流支援全国協会(ACCSJ)は2019年に設立された団体で,代表理事は立命館大学名誉教授二宮周平氏です。
離婚などで別居しても,子どもが安心して親と面会交流を行うことが求められていますが,そのために父母の間で憎しみや嫌悪感が強い場合や(高葛藤),安全性に問題がある場合には,交流のための援助や危険度をアセスメントして制限するなどの支援が必要となります。同協会は,心配なく支援を受けることができるように支援団体の適正が示され,その質が確保されることが重要であるとの考えにより,設立されました。
設立より検討が重ねられ,2022年10月から面会交流支援団体を独自に認証する制度を開始することになったとのことです。
【2023年4月新設こども家庭庁と,こども基本法】
こども家庭庁の設置関連法が,本年6月15日に成立しました。初年度の予算は,総額4兆7510億円とのことです。こども家庭庁に移管する厚生労働省や内閣府などの関連部局の今年度当初予算よりも,合計で639億円増加しています。
また,こどもの権利を守るための基本理念を定めたこども基本法も,本年6月15日に成立しました。こども基本法は,日本が1994年に批准した子どもの権利条約に対応する国内法です。
【法制審議会の部会が,共同親権等の中間試案のとりまとめを見送りました。】
共同親権の導入などを議論してきた法制審議会(法相の諮問機関)の部会は,8月30日,中間試案の取りまとめを見送りました。
もともと現行の「単独親権」の維持と両案併記の形でパブリックコメントを募集する予定でした。
現民法は,離婚後は親権を父母のどちらか一方に決める単独親権としています。共同親権とするか否かについて,賛成派、慎重・反対派の対立が激しく,弁護士会の内部でも多様な意見があります。
法制審議会の部会は,本年7月にまとめた中間試案のたたき台で,共同親権の導入と単独親権の維持の両案を併記していますが,さらに,共同親権を導入した場合でも,原則例外や,監護者について複数案を示しており,内容はとても複雑になっていました。
夏季休業のお知らせ
弊事務所の令和4年(2022)年夏季休業日は,8月11日(木・祝)~8月16日(火)です。令和4年(2022)年8月17日(水)から,通常業務となります。
また,上記期間中に,メールにてお問い合わせいただいた場合も,弊事務所からのご連絡は,8月17日(水) 以降,順次となりますので,予めご了承ください。
【法務省の諮問機関である法制審議会の家族法制部会で,離婚後の子ども養育について,中間試案のたたき台となる論点整理がなされました。】
今月19日,法制審議会の家族法制部会は,離婚後の子どもの親権について,共同親権と単独親権を選択できるという案と,現行法の単独親権を維持するという案などを,複数案提示しました。
共同親権を導入する場合には,「原則共同,例外単独」「原則単独,例外共同」「原則・例外を定めずに,柔軟に選択できるという考え方」などがあります。
さらに,共同親権とする場合の子どもの監護者について,必ず定めるという案と、監護者の設定について父母の協議で選択するとの2つの案が示されました。
監護者が指定された場合の親権行使についても複数の案が示されています。
中間試案のたたき台となる論点整理では,いまだ多くの論点や考え方が示されている状況で,今後の議論の流れが注目されます。
【世界経済フォーラム(WEF)は,今月13日,2022年版「ジェンダーギャップ報告書」を発表し,日本は世界116位と,主要先進国中,最下位でした。】
スイスの団体であるWEFは,ジェンダーギャップ報告書を2006年から発表しています。今回は146か国を対象に,教育,健康,政治,経済の4分野を分析しています。
日本は前回120位で,今回は少し順位が上がりましたが,対象国が前回より10か国減っています。
1位はアイスランドで,13回連続首位です。アイスランドは女性が首相です。
2位~10位は,2位フィンランド,3位ノルウェー,4位ニュージーランド,5位スウェーデン,6位ルワンダ,7位ニカラグア,8位ナミビア,9位アイルランド,10位ドイツとなっています。
日本では,長年,政治と経済の分野が課題となっています。
【児童福祉法などの改正法が6月8日に成立しました】
児童福祉法などの改正法が,本年6月8日に成立しました。一部を除いて,2024年4月に施行されます。
主な改正点は次のとおりです。
①児童養護施設や里親のもとで暮らす子どもの支援を最大22歳までとしてきた年齢制限を撤廃する。
②児童相談所が虐待を受けた子どもなどを「一時保護」する際に,裁判所が可否を判断する司法審査を導入する。
③子どもへの性犯罪で登録を取り消された保育士の再登録を厳格化する。
④市区町村に対し「子ども家庭センター」を設置するよう努力義務を課す。
令和2年度に全国の児童相談所が対応した18歳未満の子どもに対する虐待の件数は20万5000件で,過去最多となっています。
【困難な問題を抱える女性支援法が本年5月19日に成立しました】
これまでの女性支援は,1956年に制定された売春防止法が根拠となってきました。
新法の成立で,家庭内暴力,性被害,貧困などの様々な支援が強化されます。
主に2024年4月から施行されます。
【民事裁判をIT化する改正民事訴訟法,離婚調停をIT化する改正家事事件手続が,今月18日に成立しました。】
民事裁判をデジタル化する改正民事訴訟法が,2022年5月18日に成立しました。記録は原則電子化され,訴状の提出から判決の送達まで,オンラインで可能となります。2025年度中に全面施行を目指しており,それまでに順次,実現進めることとされています。弁護士らはオンラインでのやり取りが義務化されますが,そうでない方は従来どおりの紙の使用も認められます。
また,双方が同意すれば,裁判終結までの期間を原則7カ月と定める制度も定められています。
日本での裁判は,書面や対面での手続きが原則になっています。海外に比べIT化の遅れが指摘されており,今回の改正に至りました。
離婚調停をIT化する改正家事事件手続法も成立しました。これまでの調停でも,電話やテレビの利用はできましたが,実際には,裁判所から,テレビの使える部屋があいていない,電話の使える部屋があいていない,などと言われることが多く,事実上,電話やテレビの利用がしにくい状況でした。また,現在の手続では,調停で離婚を成立させる際には当事者の出頭が原則となっています。裁判官によっては電話でも認めたり,代理人だけでも認めたり,あるいは,調停に代わる審判を出すことによって当事者が出頭しなくて良いようにはからってくれたりするのですが,統一的な運用とはなっていません。これらの状況が,改正法によって,大きく変わることになります。
【5月20日,総理は,新しい資本主義実現会議で,企業に対し,男女間の賃金格差の開示を義務付けることを明らかにしました。】
本年5月20日の第7回新しい資本主義実現会議で,総理は,労働者の男女間賃金格差を解消していくため,早急に,女性活躍推進法の制度改正を実施し、労働者300人を超える事業主に対し,男性の賃金に対する女性の賃金の割合を開示することを義務化すると述べました。この夏には施行できるよう準備を進めるとのことです。
【奈良市子どもセンターが本年4月1日から開所しました】
奈良県内には,これまで児童相談所が2か所ありましたが,この4月1日から,奈良市の児童相談所(名称は奈良市子どもセンター)が開設され,県内の児童相談所は3か所になりました。
奈良市子どもセンターには,子どもが家庭から離れて暮らすための一時保護所もあります。
奈良市子どもセンターでは,相談,介入,その後の支援をワンストップで行うことができます。
奈良市子どもセンターの開所に伴い,奈良市では,センター内に子育て相談課を置き,一時保護課と子ども支援課を新設しました。奈良市子どもセンターでは,正規職員60人が配置され,会計年度任用職員を加えると,120人以上が稼働することになります。
奈良市では,企業局と消防局を除いた管理職の女性比率は34.6%で,過去最高を更新したとのことです。
【本年4月4日,こども基本法案が国会に提出されました。】
「こども家庭庁」を設置するための政府の法案が国会に提出され,自民・公明両党は「こども基本法案」を4月4日に衆議院に提出しました。
こども基本法案は,すべての子どもが個人として尊重され,基本的人権が保障され,差別的扱いを受けることがないことなどが定められています。また,子ども政策の基本方針である「大綱」を策定することや,「こども政策推進会議」の設置などが盛り込まれています。
他方,行政から独立して調査・勧告する第三者機関の設置については見送られました。
【今月10日の警察庁の発表で,昨年1年間で警察が摘発した児童虐待事件は2174件で過去最多を更新しました】
昨年1年間に警察が摘発した児童虐待件数は2174件,被害に遭った18歳未満のこどもは2219人で,いずれも過去最多を更新したとのことです。8年連続での過去最多の更新です。これは,通告件数ではなく,警察が事件として摘発した件数です。
暴行や傷害などの身体的虐待が8割,次に性的虐待,脅迫などの心理的虐待,保護責任者遺棄などのネグレクトが続きます。加害者は実父が1039人で最多です。 死亡したこどもは54人で,うち,無理心中は29人だそうです。
なお,警察から児童相談所に通告した子どもは過去最多の10万8059人で,子どもの前で配偶者に暴力を振るうなどの面前DVが,4割を超えます。
【今月8日,家事事件手続法の改正案が閣議決定され,離婚調停の離婚の意思確認がウェブ会議でも可能になる予定です。】
今月8日,民事裁判のIT化に関する民事訴訟法の改正案や,離婚調停をウェブ会議だけで成立できるようにする家事事件手続法の改正案が,閣議決定されました。
昨年12月より,家事調停のオンライン化が東京,大阪,名古屋,福岡の家裁で試験的に開始しています。
改正案が成立すれば,離婚調停で一度も裁判所に行かずに話し合いをすることが可能となります。
ウェブ会議の利用で,利便性のほか,DV被害者の心理的負担が軽くなることが期待されています。他方で,ウェブ会議で,当事者と裁判所の調停委員が信頼関係を築くことができるのかといった課題も指摘されています。
【議員立法を目指す議員連盟は,精子・卵子提供者らの情報管理を担う公的機関(独立行政法人)を設置するなどの新たな法律の骨子案を了承し,今国会への提出を目指します。】
第三者の精子・卵子を用いる生殖補助医療について,こどもの出自を知る権利を保障することを目的としています。
今後,各党での協議を踏まえ法案作成を進め,早ければ今国会の提出を目指すそうです。
骨子案の概要は次のとおり。
・精神,卵子の提供者については供給医療機関が,氏名,住所,生年月日,マイナンバーなどの情報を提供する。
・夫婦と生まれた子どもについては,同様に,実施医療機関がそれぞれの情報を提供する。
・子どもは成人後,提供者の情報の有無を公的機関に確認できる。
・子どもが提供者の詳細な情報の開示を求めた場合,公的機関は提供者にその要請を伝え,開示するかどうか提供者が判断する。
・精子や卵子の提供を受けられるのは法律上の夫婦に限定するが5年をめどに見直しも検討する。
・あっせん機関は許可制とし,非営利とする。
・一人の提供者から生まれる子どもが10人を超えないように上限を設ける。
・提供精子を使った人工授精のほか,提供精子・卵子を使った体外受精も対象とする。
【神奈川県大和市で小学一年生の男の子が亡くなった事件】
神奈川県大和市で,2019年8月に,小学1年生の男の子が亡くなった事件について,それまでの児童相談所の対応は次のとおりだそうです。
2012年6月,児童が誕生します。2012年10月,母が児童について心肺停止していると通報し,救急搬送入院。この時,10年ほど前,兄と姉が生後半年経たず死亡していたことも踏まえ,児童相談所は児童を一時保護しました。その後,児童相談所は,保護者の同意を得て,児童を施設に入所させますが,2015年3月に,児童は施設を退所して家に戻ることになります。
2017年4月,児童の弟が自宅で死亡し,これを受けて児童相談所は,再び児童を一時保護します。児童相談所は,児童を施設入所させる方針をとりましたが,保護者の意に反したため,横浜家庭裁判所に児童福祉法28条に基づく審判を申し立てました。この審判は一般に認容されることが多く却下は極めて少ないのですが,2018年10月,横浜家庭裁判所は却下しました。児童相談所は,これを受けて,2018年11月に一時保護を解除しましたが,一年も経たないうちに,児童は亡くなりました。
横浜家庭裁判所がなぜ却下したのか,児童相談所が判断に必要な情報を十分提供できていたのかなど,経緯の検証が求められています。
なお,横浜家庭裁判所は,「非公開の手続きのため,理由など個別具体的な内容については控える」としています。
【今月17日,「生命倫理に関わる生殖・周産期医療を管理・運営する公的機関の設置に関する提案書」を日本産科婦人科学会がまとめ,国に提出しました。】
提案書の内容は,第三者から提供された精子・卵子について,提供者の情報の管理などを担う公的機関の設置を国に求めるというものです。
生まれた子どもが,遺伝子上の親を知る「出自を知る権利」を保障する上で必要としています。
生殖補助医療法が2020年12月に成立していますが,出自を知る権利は「2年を目途に検討する」とされています。
【法相の諮問機関である法制審議会は,今月14日,現行の嫡出推定を定めた民法の見直しなどを,答申しました】
民法772条1項は,「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する。」と定め,同条2項は,「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定する。」と定めています。また,民法733条1項は,「女は,前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ,再婚をすることができない。」と定め,2項で例外規定を定めています。
もっとも,近年,夫のDVから逃れ,別の男性との間に子どもができた場合に,前夫の子とされるのを避けるため,妻が出生届を出さず子どもが無戸籍となるという問題があることがクローズアップされるようになりました。
答申では,①再婚していれば離婚の時期にかかわらず「現夫の子」とする例外規定を設ける②女性の100日の再婚禁止期間を設けた規定を撤廃する③嫡出否認の権利を子どもや母親に広げる,といった内容が盛り込まれています。
【厚生労働省は,今月,児童福祉法上の対象年齢18歳(最長22歳まで延長あり)の上限年齢を撤廃する方針を固めました。】
今月3日,厚生労働省の社会保障審議会専門委員会が、児童福祉法改正に向けた報告書を取りまとめました。
厚生労働省は,虐待や貧困など様々な理由で児童養護施設,里親などのもとで暮らす子供たちについて,現行の18歳まで(最長22歳まで)の年齢制限を撤廃する方針を明らかにしました。これまで,多くの子どもたちが18歳までで支援が終わってしまうため,18歳を迎えた後の切れ目のない支援が求められていました。
また,この報告書の中では,児童相談所が虐待を受けている子どもを親などから引き離す一時保護の要否について,裁判官が判断する司法審査制度の導入も盛り込まれています。
【2021年9月以降に離婚等の事情で18歳以下の子どもへの10万円給付を受給できなかった人も,今月末までに申請すれば受け取ることが可能になりました】
コロナ対策で昨年決定された18歳以下の子ども一人当たり10万円相当の臨時特別給付金は,離婚等の事情で受給できない人がいることが問題となっていました。
政府は,今月8日,今月末までに申請すれば,離婚したひとり親世帯に追加支給すると発表しました。これまでは,昨年8月末時点の児童手当の受給者が給付の対象でしたが,昨年9月以降に離婚などにより新たに18歳以下の子の養育者となった人については,本年2月28日を新たな基準日とするとのことです。
【民法822条に規定している子に対する「懲戒」の削除などを盛り込んだ答申案を法制審議会の部会がまとめました】
法制審議会の民法親子法制部会は,民法の「懲戒権」について3案を示しました。
民法は822条は,「監護及び教育に必要な範囲内で,懲戒することができる」と定めています。
2019年に体罰を禁止した改正児童福祉法が成立し,その付則に,2020年4月の施行後2年をめどに懲戒権のあり方について検討を求める規定が入りました。
中間試案は①懲戒権の規定を削除②「懲戒」の文言を変更③体罰禁止を明確化――の3つの案を示しています。
②案は,「監護教育のために必要な指示及び指導ができる」としたうえで「ただし、体罰を加えることはできない」と定めます。
③案は「監護教育の際に体罰を加えてはならない」と,体罰禁止を明確にする案です。
この3つの案をパブリックコメントにかけ,再び部会で議論する予定となっています。
【不払いが深刻な養育費などを対象に,裁判外和解に強制力を持たせる制度を,法制審議会が答申案をまとめました。】
法制審議会の部会は,不払いが深刻な養育費などを対象に,裁判外で成立した当事者間での和解合意に裁判所が強制力を持たせる制度の新設を,答申案にまとめました。親権や面会交流などの家事紛争は対象外ですが,養育費は例外とされました。
総会の答申の後,法務省が国会への提出を目指すという流れになります。
【警察庁の本年2月3日の発表によれば,警察が昨年1年間に児相に通告した18歳未満の子どもは過去最多の10万8050人(暫定値)になりました。】
通告の内訳は,心理的虐待が8万299人,身体的虐待は1万9185人,育児放棄8270人,性的虐待296人です。虐待で親などを摘発した事件も増加傾向にあり,こちらも過去最多の2170件を更新しました。
DVの相談件数も増加を続けています。昨年1年間で8万3035件で,統計を取り始めた2001年以降,過去最多です。
【民事の匿名裁判について】
2021年7月30日に,法制審議会(法相の諮問機関)の民事訴訟法部会は,被害者の氏名や住所を秘匿したまま民事訴訟手続きを可能とする制度の試案を公表しました。予定では,今月あたりに,最終案が答申されることになっています。
民事訴訟では訴状に氏名などを記載する必要がありますが,試案では原告が氏名や住所を訴訟の相手に閲覧されることで社会生活に著しい支障が生じる恐れがあるなどの要件を満たした場合には,裁判所の決定で氏名や送達場所を秘匿できるとしています。また,第三者の提出する資料や判決書でも匿名にできるとしています。
他方,相手側には,要件を満たさなかったり訴訟上の防御などに不利益がある場合には,取り消しを申し立てる権利があるとしています。
この匿名裁判が制度としてできれば,DVで避難し住居を隠している人も,現在よりは訴訟をためらわずにすみそうです。
【子どもアドボカシー】
「子どもアドボカシー」という言葉をご存知でしょうか。子どもの声を聴く活動で,子どもの意見表明を支援するため子どもの代弁者となって,こどもの声を大人に伝えます。
日本が批准している子どもの権利条約で子どもの意見表明権が規定されていますが,国連子どもの権利委員会から2019年2月に受けた総括所見の中で,緊急分野として子どもの意見尊重が指摘され,子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明する権利を保障し、かつ、子どもの意見が正当に重視されることを確保することが,勧告されています。
子どもアドボカシーは,子どもの意見表明権を支援する活動で,その活動を行う人を「子どもアドボケイト」と言います。
厚生労働省の検討会は,2021年5月,虐待を受けた子どもが児童養護施設などで生活することを決める前に児童相談所があらかじめ子どもの意見を聴くことを法律で義務化し,子どもが意見を表明できる権利を保障すべきだとする提言をまとめています。
各地の児童相談所や養護施設で,少しずつ,子どもアドボカシーの取組が始まっています。
【奈良県におけるパートナーシップ制度の導入】
同性カップルの関係を公的に認める「パートナーシップ制度」の導入が,奈良県でも徐々に進んでいます。
2020年4月に奈良市,大和郡山市が導入し,2021年4月には生駒市,天理市も導入しました。
奈良市でパートナーシップが認められるための要件は,
①双方が成年に達していること
②住所について,次のいずれかに該当していること。
(1)双方が市内に住所を有していること。
(2)一方が市内に住所を有し,かつ,他の一方が3か月以内に市内への転入 を予定していること
(3)双方が3か月以内に市内への転入を予定していること。
③双方に配偶者がいないこと及び他の者とパートナーシップの関係にないこと。
④宣誓をしようとする者同士が近親者でないこと。
奈良市でパートナーシップが認められると,次のようなサービスが受けられるそうです。
①市営住宅の入居の資格者となる。(市営住宅への入居要件の中に、現行の(1)配偶者(内縁関係を含む)(2)3親等以内の血族又は姻族に加え、(3)パートナーシップ宣誓を行なった登録者を追加します。)
②その他、庁内各課における各種申請書類等で、市が任意で様式を定めているものについては、性別欄の見直しを行う。
③各種申請書類等において、性別違和を理由とした通称の使用を検討する。
【2021年5月26日に,改正ストーカー規制法が成立しています!】
2021年5月26日に「ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律」が公布されました。
2021年6月15日から,①住居,勤務先,学校など通常いる場所のほか,被害者が実際にいる場所の付近において見張る,押し掛ける,みだりにうろつく行為 ②電話,FAX,電子メール,SNSメッセージに加え,拒まれたにもかかわらず連続して文書を送る行為が規制されています。さらに,
2021年8月26日から,①GPS機器等を用いた位置情報の無承諾取得等が規制の対象となり、②禁止命令等に係る書類の送達に関する規定が整備され、その送達を受けるべき者の住所及び居所が明らかでない場合には、都道府県公安委員会はその送達に代えて公示送達をすることができるようになりました。
年末年始の休業日について
弊事務所の令和3年(2021)年冬季休業日は,12月29日(水)~1月5日(水)です。令和4年(2022)年1月6日(木)から,通常業務となります。
また,上記期間中に,メールにてお問い合わせいただいた場合も,弊事務所からのご連絡は,1月 6日(木) 以降,順次となりますので,予めご了承ください。
【2021年3月,最高裁は,祖父母が子どもの監護者に自分を指定するよう申し立てた審判で,父母以外はできないとする判断を下しました。】
監護者は,子どもを監護する者のことを言います。離婚などの際に,父母が裁判所に申し立てて第三者を監護者に指定することはできますが,その申立を第三者ができるかどうかについて,下級審の判例は分かれていました。この事案では,一審,二審ともに,祖母の申立を認めていましたが,最高裁で覆りました。
最高裁は現行の民法を前提に,厳格に判断していますが,今後の法制審議会の議論のあり方にも影響を与えるもの思われます。
【2021年3月の最高裁で,子どもの面会交流について,祖父母は申立権を有しないとの判断が示されました。】
この事案は,孫の母が病気で亡くなったあと,母方祖父母が孫と会えなくなり,面会交流審判を申し立てたというものです。大阪高裁は面会交流を認める決定を出していましたが,最高裁で覆りました。最高裁は「第三者が面会交流を求める申し立てができるという規定はなく,第三者を父母と同一視することもできない。父母以外の第三者は申し立てができない」と決定しました。
【養育費の請求権を子の権利として明記する法改正が,法制審議会で検討されることになりました。】
家族法研究会がまとめた報告書を踏まえ,2021年3月30日から,法制審議会の部会での議論が始まっています。
議論される内容は,養育費を適切に確保するための取り決めや,父親と母親の双方が子どもの親権を持つ「共同親権」の導入の是非などです。
【2021年3月31日に世界経済フォーラムがまとめた報告書で,日本は,男女平等の実現について,156か国中120位でした。】
日本は前年121位でしたが,今回も男女格差が縮まらず,主要7か国(G7)で最下位でした。
今年度の1位はアイスランドで12回目の1位です。2位フィンランド,3位ノルウェー,4位ニュージーランド,5位スウェーデンと,北欧の国々が上位となっています。上位4か国は女性が首相です。
G7の中のトップはドイツで11位,最下位から2位はイタリアで63位です。
【警察が昨年1年間に摘発した児童虐待事件は過去最多となり,亡くなった児童は61名でした。】
警察庁の発表によれば,警察が2020年の1年間に摘発した児童虐待事件は前年から8.2%増加して2133件で,被害にあった18歳未満の子供は前年から9.1%増加して2172人とのことです。
また,警察が,2020年の1年間に虐待に疑いがあるとして児童相談所に通告した件数も前年から8.9%増加して,10万6991人だったとのことです。
【同性のカップルも異性の事実婚と同様に法律婚と位置付ける判断が最高裁で確定しました。】
アメリカのニューヨーク州で2014年に婚姻した女性のカップルについて,相手女性が出産を望み,SNSで知り合った男性(のちに女性に性別変更)から精子提供を受けたのですが,その後,その相手女性は男性と不倫し,婚姻関係が破綻しました。原告の女性は,この相手女性に約310万円の賠償を求めたという事案です。東京高裁は,女性のカップルの関係を,2010年から7年近く同居し,同性婚が認められている米国で婚姻登録証明書を取得し,日本で結婚式を挙げたことなどから,婚姻に準ずる関係と認定し,判決で相手女性に110万円の賠償を命じました。
最高裁は2021年3月17日付の決定で,不倫した相手女性の上告を退けました。
【同性同士の不倫について,11万円の慰謝料などを支払うよう命じる判決が東京地裁で出されました。】
妻と不倫した女性に対し550万円の損害賠償を求めた裁判で,婚姻生活の平和を害する行為があったとして不法行為を認定し,慰謝料11万円を支払うよう命じる判決が,今月16日,東京地裁で言い渡されました。
【2021年3月17日,札幌地裁で,同性どうしの婚姻が認められないのは,法の下の平等を定めた憲法14条に違反する,との判決が出されました。】
札幌地裁も含め,東京,大阪など全国5つの地方裁判所で,同性婚を認めない民法や戸籍法は違憲だとする訴訟が係属しており,今回の札幌地裁の判断が,同種の訴訟の中で初判断となります。
判決では,性的指向は人の意思で選択,変更できない。同性愛者が婚姻によって生じる法的効果の一部すら受けられないのは,立法府の裁量を超えた差別的な扱いだと指摘しました。もっとも,国会が同性婚を認める立法措置を取ってこなかった立法不作為の違法性を認めず,原告の請求は棄却しました。
ちなみに,『NPO法人 EMA日本』によれば,2020年5月時点で,同性婚および登録パートナーシップなど同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は世界中の約20%の国・地域(オランダ,ベルギー,スペイン,カナダ,南アフリカ,ノルウェー,スウェーデン,ポルトガル,アイスランド,アルゼンチン,デンマーク,ブラジル,フランス,ウルグアイ,ニュージーランド,英国,ルクセンブルク,米国,アイルランド,コロンビア,フィンランド,マルタ,ドイツ,オーストラリア,オーストリア,台湾,エクアドル,コスタリカ)に及んでいるとのことです。また,登録パートナーシップ制度を持つ国もあります。
【公的発言におけるジェンダー差別を許さない会による,ワースト発言を決めるキャンペーン結果】
公的発言におけるジェンダー差別を許さない会による,ワースト発言を決めるキャンペーンの結果,ワースト性差別発言に選ばれたのは,自民党の杉田水脈衆院議員の「女性はいくらでも嘘をつける」でした。
これは,杉田議員が,2020年9月,自民党の会議で女性に対する暴力や性犯罪などに関連して「女性はいくらでもうそをつける」などと発言したことを指しています。後に,杉田議員は,この発言を認め,陳謝しています。
ちなみに,性的暴行の被害を訴えているジャーナリストの伊藤詩織さんによれば,杉田議員は,誹謗中傷のツイートに繰り返し「いいね」を押し,その結果,10万人を超えるフォロワーに拡散されたとのことです。伊藤さんは,名誉を傷つけられたとして,220万円の賠償を求める訴えを起こしています。
【GPS機器などを使ったストーカーを規制するストーカー規制法の改正案が2021年2月26日に閣議決定されました。】
ストーカー規制法は2000年5月に制定されました。今回の改正法の法案では,相手方の承諾なく,GPS機器などを使って位置情報を取得することを規制対象にしています。車に付けたり,持ち物に忍ばせる行為が規制されます。GPSやスマホのアプリによる位置情報取得も規制対象になります。
警察庁によると,昨年のストーカー規制法違反の摘発は985件で,10年前の4倍を超えているそうです。特にGPSの悪用が増えていますが,最高裁が2020年7月30日に,女性の車にGPSを取り付けた男らの裁判で「見張り」に当たらないと認定し,警察庁の有識者検討会が法改正を提言していました。
違反すれば,警察が禁止命令や警告を発することができ,立件されれば,最高で2年以下の懲役か200万円以下の罰金となります。
また,見張りや押しかけなどのストーカー行為が規制される場所は,相手の住居など「通常所在する場所」付近を対象としていますが,これに加え,「現に所在する場所」が追加されます。
これは,SNSに投稿された画像などから居場所を突き止め,押しかけるケースが相次いでいるからだそうです。
【警察が昨年1年間にDV被害は17年連続で最多を更新し,8万2643件でした。】
昨年,全国の警察に寄せられたDVの相談は8万2643件で,17年連続で最多を更新しました。DVへの社会的な関心の高まりを受けて相談,通報が増えたとみているほか,新型コロナウイルスの感染拡大で自宅にいる時間が長くなり、夫婦間など家庭内の暴力が深刻化しているおそれがあるとしています。
被害を受けた人は,76.4パーセントが女性です。男性は5年間で2倍近くになっています。年代別では,30代が最も多く全体の27%,次に20代が23%となっているとのことです。
【子どもの引き渡しの直接強制に関するニュース】
離婚や別居に伴う子どもの引き渡しについて,裁判所の執行官が直接子どもの引き渡しを執行する直接強制の完了率は,約3割だそうです。強制執行が実現しない不能の割合の方が高く,また,何らかの理由で執行が中止となる取り下げも一定割合存在します。
2020年4月施行の改正民事執行法により,強制執行の際に同居中の親の立会が不要となり,また,執行官が学校や保育園で子どもの引き渡しを受けることも可能となりました。
それでも,子ども自身が引き渡しを嫌がったりするなど,執行官が強制的に子どもの引き渡しを受けることは,必ずしも容易ではないようです。
【公的発言におけるジェンダー差別を許さない会による,ワースト発言を決めるキャンペーンが開始しました。】
2021年2月26日から,「ジェンダーに関する問題ある公的発言ワースト投票2021」がスタートしています。今回は,3月8日の国際女性で―に合わせた企画で,投票は3月5日までです。大学教授らが2017年から始め,今回で4回目となります。投票は,ウェブサイト
(https://yurusanai-seisabetsuhatsugen.jimdofree.com/)
です。
ワースト発言候補には,森喜朗氏の「女性理事を選ぶというのは,日本は文科省がうるさくいうんですよね」「だけど,女性がたくさん入っているりじかいは,理事会の会議は時間がかかります」(後略)など,8件がノミネートされています。
ちなみに,2020年の投票では,麻生太郎氏の「(日本人の平均寿命が延びたのは)いいことじゃないですか。すばらしいことですよ。いかにも年寄りが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるけど間違ってますよ。子どもを産まなかったほうが問題なんだから」がワースト1位に選ばれました。
【法制審議会の民法(親子法制)部会が,答申の中間試案をまとめました。】
中間試案では,嫡出推定の制度の見直しについて,「離婚から300日以内に生まれた子は前夫の子」とする規定の例外として,「再婚後なら夫の子」と新たに規定することを盛り込んでいます。これは,前夫の子とされることを避けるために,出席届を出さず,子どもが無戸籍となることを防ぐ目的です。また,例外規定の新設に伴い,離婚後100日間の再婚を女性に禁じる規定も撤廃します。
また,親権者の子への懲戒権の見直しも盛り込まれています。
【兵庫県明石市は,児童相談所による子どもの一時保護が妥当か否かを確認する第三者委員会を2021年4月に設ける方針を決めました。】
日本では,一時保護が2か月を超える場合の司法審査,保護者の意向に反して施設入所させる場合の司法審査はありますが,一時保護をしたときの司法審査は導入されていません。
明石市が予定している第三者委員会は,児相が一時保護した当日か翌日に,第三者委員会の委員がこどもと面会し,納得がいかないなどの意思表示があれば,委員会を開いて妥当性を調査します。その他の場合でも,委員の判断で調査が可能です。また,保護者からの調査の要請も受付ます。一時保護から2週間をめどに判断し,意見を児相に伝えます。意見に拘束力はありませんが,児相は最大限尊重することになります。
【昨年1年間に警察が虐待の疑いがあるとして児童相談所に通告した件数は,前年比8.9パーセント増で,10万6960人でした。】
今月4日の警察庁の発表によれば,警察が昨年1年間に児童相談所に通告した18歳未満の子どもは,前年比8.9パーセント増で,10万6960人でした。統計を取り始めてから,初めて10万人を超えました。
また,親などを児童虐待で摘発した事件は,前年より8.1パーセント増で,2131件とのことです。
【配偶者暴力相談支援センター等での相談数が,昨年4月~11月は,前年同月と比べ4~6割増加しました。】
内閣府の調査によれば,配偶者や交際相手などから暴力を受けたDVの相談件数が,全国の自治体にある「配偶者暴力相談支援センター」と昨年内閣府が設置した「DV相談プラス」と合わせて,2020年4月~11月で過去最多となり,前年の同月と比べ4~6割増えたとのことです。
未成年者と同居している被害者からの相談のうち,その6割には,児童虐待もみられるとのことです。
【男性の産休の新設や,母親の育休を2回に分割できるよう定めた,育児・介護休業法などの改正案が,今国会に提出される見通しです】
男性の育児休業の取得を促すため,政府は,育児・介護休業法などの改正案をまとめました。男性の育児休業については,政府は2025年までに取得者の割合を30%にすることを目標に掲げているものの,2019年度は7.48%に低迷しています。
改正案では,次のような変更が予定されています。
①父親が通常の育休とは別に,生後8週までの間に,2回に分割可能な最大4週間 の産休を取ることができる。
②育休を2回に分割できる。
③働いて1年未満の非正規雇用の労働者でも育休を取得できる。
④企業に対して育児休業を取得しやすい雇用環境を整備するため従業員への制度の周知を義務づけ
⑤大企業には育児休業の取得率の公表を義務づけ
【明石市が本年1月8日から「明石市パートナップ・ファミリーシップ制度」を始めています】
性的少数者などのカップルの関係を公的に認めるパートナーシップ制度は,東京都渋谷区で2015年に導入されたのを皮切りに,全国に広がり,現在では約70の自治体がパートナーシップ制度を創設しています。
明石市は,カップルだけでなく,カップルなどが育てる子どもも家族として公に認める,「明石市パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を,全国に先駆けて,創設しました。医療機関,市営住宅,市営墓地,犯罪被害者等遺族支援金等の給付,住民票の続柄を「同居人」ではなく「縁故者」とすることが可能,といった効果が発生するとのことです。
【夫婦別姓について,最高裁判所が,再び憲法判断を行う見込みです】
夫婦別姓を認めないのは憲法に違反するとして,婚姻届受理の審判を求めた3組の事実婚の夫婦について,家裁及び高裁は棄却しましたが,昨年12月9日,特別抗告に対し最高裁は裁判官15人全員が揃う大法廷で審理することを決定しました。
最高裁判所大法廷は,2015年の判決で,夫婦同姓を定めた民法規定を合憲と判断しています。
内閣府が2018年に公表した世論調査では,選択的夫婦別姓を導入してよいと考える人は,過去最高の42.5パーセントで,導入する必要はないと考える人は29.3パーセントとなっており,良いと考える人が大きく上回っています。
最高裁判所大法廷は,法律が憲法に違反するかなど,重要な判断が必要な場合に開かれます。2015年の判決では,15人中5人の裁判官が違憲であるとの意見を述べています。
【2020年12月に,出産女性を母とする,生殖医療民法特例法が成立しました。】
第三者から卵子や精神の提供を受けた生殖補助医療で子どもを産んだ場合の親子関係を定める民法の特例が,2020年12月4日に成立しました。この法律では,第三者からの卵子提供を受けて出産した場合,卵子の提供者ではなく,出産した女性を母としています。また,夫以外の男性の精子による不妊治療で妻が妊娠した場合,精子提供に同意した夫を父としています。
他方で,生まれてきた子供の,出自を知る権利については,検討課題として付則に盛り込まれるにとどまりました。
【2019年度のいじめの認知件数が過去最多となりました。】
2019年度のいじめの認知件数は61万2496件で過去最多となりました。認知した学校も全体の82.6パーセントで,過去最多です。また,暴力行為の発生は7万8787件,不登校の小中学生は18万1272人で,過去最多になりました。なお,不登校の高校生は5万100人でした。
【性暴力被害について全国のワンストップ支援センターに,今年度の4月~9月に寄せられた相談件数は前年同期より15.5パーセント増加になりました。】
性暴力被害について全国のワンストップ支援センターに,今年度の4月~9月に寄せられた相談件数は2万3050件で,前年同期より15.5パーセント増加になりました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛で時間ができ,マッチングアプリなどを使い始めたことがきっかけとなって被害にあった,といった相談などが,きているそうです。
相談は,全国共通の短縮番号 「♯8891」です。
【奈良市が2020年12月1日に「フードバンクセンター」を開設します。】
奈良市によると,今年7~8月,一人親か抵当医療費助成の受給者2914世帯を対象にアンケート調査をしたところ,必要とする支援について,第1が経済的支援,第2が食料品の無料受け取りや配達,が多かったとのことです。奈良市が支援対象とするのは,児童扶養手当受給世帯と,子どものいる準要保護世帯で,実数で3500世帯です。対象世帯には奈良市がはがきで通知し,提供を希望する場合はウエブの専用フォームで申し込みます。
【2018年の日本の子どもの相対的貧困率は13.5%です】
厚生労働省の国民生活基礎調査によれば,子どもの相対的貧困率は13.5%で,なお7人に一人が相対的貧困にあります。相対的貧困率は,等価可処分所得の中央値の半分(これを貧困線といいます。)に満たない世帯の率です。2018年の貧困線は127万円となっています。子どもの相対的貧困率は,貧困線に届かない17歳以下の割合です。
生活意識別に世帯数の構成割合をみると,全世帯の場合「苦しい」(「大変苦しい」と「やや苦しい」)が54.5%ですが,母子世帯のみの場合「苦しい」の割合は86.7%,児童のいる世帯のみの場合「苦しい」の割合は60.4%です。
新型コロナと離婚に関するQ&A
◎同居中の場合
Q 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、夫の会社が原則在宅勤務となり、夫が常に家にいる生活が続いています。夫は家庭のことについては何も協力してくれず、私の家事の負担ばかりが増え、最近は、夫と別居したい、離婚したいと思うようになりました。どうしたら良いですか。
A 新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が出され、政府の専門家会議より、新しい生活様式が提案されています。
夫婦の生活も、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、これまで表面化してこなかった問題が浮き彫りになってきています。夫と別居したい、離婚したいという思いがあるのでしたら、まずは法律相談されることをお勧めします。
Q 夫の会社がテレワークを推奨し、夫はほとんど自宅にいる状態です。法律相談に行こうにも、夫に行き先をこと細かに聞かれ、容易に外出できない雰囲気です。どうしたら良いでしょうか。
A 当法律事務所では、国の緊急事態宣言が出されている間につきましては、ズーム相談や電話相談を実施し、ご来所いただかない方法での法律相談を実施しています。
もっとも、緊急事態宣言が出されていない期間は、面談相談のみを実施しており、ご相談者様にご来所いただくことにしています。これは、ご相談者様のご相談内容を正確に把握し、円滑なコミュニケーションを図った上で、ご相談者様に応じた最適なご提案をするためには、直接お会いしてお話をお聞きする必要が高いと考えるからです。当事務所では、新型コロナウイルス対策として、感染リスクを最小限に抑えるための対策も実施しています。
法律相談を希望されるとうことでしたら、何とかお時間をとっていただき、面談相談のご予約をおとりください。
Q 夫が家にいるようになり、夫からの暴力がエスカレートしています。どうしたら良いですか。
A まずは、あなた自身について、暴力から身を守ることが大切です。夫の暴力から逃れるため、自宅から避難する、シェルターに入る、警察に連絡する、配偶者暴力相談支援センターに相談するといった方法があります。弁護士にもご相談されることをお勧めします。
◎別居中の場合
Q 夫から、新型コロナウイルスの影響で収入が減り、今後は婚姻費用を支払えないと言われてしまいました。どうしたら良いですか。
A まずは、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立ててはどうでしょうか。
裁判所の調停期日も、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、以前より予定が入りづらくなっていますが、調停の申立をせずにいると支払のないまま時間だけが過ぎてしまうことになりかねません。
また、ご自身で申立をするのが不安な方や、弁護士による交渉を希望される方は、弁護士にご相談されることをお勧めします。
◎離婚後
Q 元夫が新型コロナウイルスの影響で失業してしまいました。元夫から、養育費を下げてほしいと言われています。どうしたら良いでしょうか。
A 元夫から家庭裁判所に養育費の減額調停の申立がなされれば、養育費を決めた時からみて元夫に事情の変更があったということで、養育費の金額が変更される可能性が高いでしょう。調停では、あなたと元夫の現在の収入を基礎にして、改めて養育費の金額を決めていくことになります。
民事執行法の改正に伴い,子の引き渡しの強制執行が変わりました
これまで,民事執行法には,子の引き渡しの強制執行に関する規定はありませんでした。
実務では,間接強制(簡単に言えば,債務者に金銭の支払義務を課し,間接的に子の引き渡しを強制する方法です)のみ認容されてきましたが,東京地方裁判所では,平成16年頃から直接強制(執行官等が子を執行を求めた親に引き渡す方法)を認容する運用がされるようになっていました。
平成26年,我が国はハーグ条約を締結し,ハーグ条約実施法が施行されました。その施行後は,子の引き渡しについても,ハーグ条約に準拠して運用されるようになりました。
しかし,ハーグ条約は,子の引き渡しの際に,子を引き渡さなければならない方の親が存在する場が引き渡しの場とされていたため(同時存在の原則),強制執行を実施しても,ほとんど執行不能に終わるのが実情でした。
このような実情を踏まえ,令和2年4月1日に施行された改正民事執行法では,子の引き渡しに関する執行についても,見直しがされました。
具体的には,子の引き渡しを認める審判等を受けた親は,間接強制を原則として優先させ,場合によっては,間接強制を経ずに直接強制を選択できるようになりました。そして,執行官による直接強制の方法についても,詳細な規程が創設されました。新たに創設された規定では,子の引き渡しを執行する場所が,子の引き渡しをしなければならない親が,必ずしも存在しないような場所でも可能とされました。
改正後の民事執行法に基づく子の引き渡しの直接強制であれば,子の引き渡しが実現される可能性が広がるのではないかと期待されています。
【新型コロナウイルスの感染拡大の影響で,面会交流が途絶えるケースが増加しています】
新型コロナウイルス感染拡大の影響により,面会交流が進まなかったり,途絶えたりするケースが増加しています。民間団体の調査等によって,このような状況が明らかになっています。
この点,法務省は,新型コロナウイルスの感染拡大により,面会交流について次のような案内をしています。
1 面会交流は子どもの健やかな成長のために重要なものですが,新型コロナウイルス感染症の拡大が問題となっている現在の状況の下では,従前取り決められた方法で面会交流を実施すると,子どもの安全を確保することが困難になる場合も生じ得るものと考えられます。
したがって,そのような場合には,面会交流の方法を変更すること等を検討していただく必要があるものと考えられますが,父母間で話合いをすることができる場合には,子どもの安全の確保に最大限配慮し,どのような方法で面会交流を実施するのが相当かについて話し合ってください。
例えば,これまでは,直接会う形での交流を続けてきた場合でも,子どもの安全等を考慮して,一定の期間,通信機器等を利用した方法での交流や,手紙での交流等に変更することを検討するときには,次のような事項について話合いをすることが考えられます。
○ 代替的な交流の方法(例えば,ビデオ電話,電話,メール等)
※ ビデオ電話や電話等の場合にはどちらから掛けるかも決めておくとよいと考えられます。
○ 日時(例えば,毎週何曜日の何時から何時まで等)
○ 代替的な交流の方法を用いる期間
○ その他,円滑な交流のために必要と考えられる項目
2 これに対し,父母間で落ち着いた話合いをすることが困難な場合には,互いに様々な不安を抱える状況にあること等を考慮して,無理に当事者間で話し合おうとはせずに,必要に応じて弁護士等の専門家に相談するようにしてください。
【養育費不払いについて,政府が法改正を検討する方針を決めました。】
政府は,2020年7月1日に決定した「女性活躍加速のための重点方針2020」に,養育費不払いについて法改正の検討を盛り込みました。
2016年の国の調査によると,母子家庭の7割超が養育費を受け取ることができていません。
【児童虐待件数が増加しています】
厚生労働省によると,全国の児童相談所が2020年1~3月に訪問や一時保護などの対応をした児童虐待件数は,いずれも前年に比べて1~2割の増加となったとのことです。近年,虐待件数は毎年増加しており,新型コロナウイルス感染拡大の影響によるものかどうかは,不明確です。もっとも,外出自粛や保護者の経済状況の悪化により,児童虐待が増加することが強く懸念されています。
【2020年4月の配偶者暴力相談支援センターに寄せられたDV相談は昨年4月の1.3倍】
今年4月に各地の配偶者暴力相談支援センターに寄せられたDVの被害相談は1万3272件で,昨年4月の1.3倍に当たるそうです。新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛の影響によるものと考えられます。
【内閣府のDV相談窓口について】
内閣府は,新型コロナウイルス感染症に伴う生活不安・ストレスなどから、DVの増加・深刻化が懸念されているとして,現在の、最寄りの配偶者暴力支援センターにつながるDV相談ナビの運用に加え、新たなDV相談事業を開始し体制を拡充するとのことです。
内閣府では,従来のDV相談ナビダイヤル(0570-0-55210)に加え,DV相談+(プラス)を新設し(0120-279-889),24時間対応しています。チャット(12時~22時)やメール相談(24時間)もできます。
【DVで別居している場合の,一人10万円の給付の受取について(2)】
一人10万円の現金給付については,原則として,世帯主が家族の分も一括申請し,世帯主の口座に全員分が振り込まれることになっています。
配偶者からの家庭内暴力,いわゆるDVを受け,避難のために異なる市区町村に居住している人は,基準日である4月27日までに住民票を異動できた場合,異動後の住民票が所在する市区町村から支給されることになっています。
他方,DVの被害者が基準日までに住民票を異動できない場合や,基準日の翌日以降に暴力が発生して避難した場合には,DV被害が確認できる書類と一緒に専用の申出書の提出が必要とされています。自治体間で,連絡が間に合わず,加害者側に振り込まれるのを避けるため,総務省は,申出書の提出期間を4月24日~30日までとしています。
30日を過ぎても提出はできますが,早めの提出が求められていますので,ご注意ください!
【女性と女児に対する暴力~影のパンデミックが起きています!】
国連組織「UNウィメン」によると,新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,都市封鎖を報告する国が増えると共に,DVヘルプラインやシェルターに助けを求める声が増えており,フランスにおけるDVの通報はロックダウン状態が始まってから30%増加,アルゼンチンにおけるDVヘルプラインへの相談はロックダウン状態が始まってから25%増加,シンガポールとキプロスにおけるヘルプラインへの相談は30%増加しています。
日本でも,外出自粛要請で,夫や交際相手らによるDVが増えるリスクが指摘されています。
【DVで別居している場合の,一人10万円の給付の受取について】
新型コロナウイルスの感染拡大により,政府が決定した一人10万円の給付については,外国人も含めて4月27日時点で住民基本台帳に登録されている人すべてとなり,原則として世帯主が一括申請し,世帯主の金融機関の口座に一括で振り込まれることになります。
DVの被害で住民票上の住所と異なる場所で暮らす人については,DV被害が確認できる書類(裁判所からの保護命令決定書や,配偶者暴力相談支援センターや市町村などにDVについて相談したときの証明書など)があれば,現在居住している自治体に申し出ることで受け取ることができるとのことです。内閣府によると,1年以内の避難で,公共料金の請求書などで居住地が確認できれば,市町村のDV相談窓口で書類を発行してもらえるとのことです。
【奈良県のDV相談受付】
2018年度に奈良県と市町村が受け付けたDVの相談件数は,1670件(重複含む)でした。前年度に比べ113件増加となっています。
奈良県で一時保護された被害者は12人増えて40人だったとのことです。
現在,新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が増加していますが,DV被害が危惧されます。
【政府の緊急事態宣言による裁判の影響】
本日,大阪地裁,家裁,神戸地裁,家裁等から当事務所宛に,依頼を受けている事件の期日取消の連絡がありました。
奈良管内の地方裁判所,家庭裁判所,簡易裁判所は通常どおりです。
報道によれば,東京高裁,地家裁(関西を含む。)は,多くの民事裁判と一部の刑事裁判の期日を取り消すと発表しました。虐待児童の一時保護や家庭内暴力,倒産事件などで緊急性の高い業務は継続するとのことです。
また,最高裁は,3月31日付けで,緊急事態宣言が出た場合の指針をまとめ通知しています。この通知では,緊急性が高い業務(配偶者の一時保護手続,逮捕,勾留,保釈といった刑事手続,民事裁判の一時的な差押えや処分,訴状や申立書等の受付など)と,各地の事情に応じて実施するか判断すべき業務を区別しています。
【奈良市でも同性のパートナーシップ制度が2020年4月から導入される予定です】
2020年3月末時点で,同性のパートナーシップ制度を導入している自治体は,34自治体あります。また,導入予定や,導入検討をしている自治体が,幾つもあります。奈良県内では,大和郡山市に続き,奈良市でも,2020年4月から導入される予定です。
自治体による同性カップルの証明は,公営住宅への入居,手術の同意,携帯電話の家族割引,航空会社のマイレージ共有などでの利用が考えられますが,民法上の婚姻と認められるわけではないため,法律婚とまったく同じ権利があるわけではありません。パートナーシップ制度の法的な権利については,今後の課題となっています。
【改正児童虐待防止法,親の体罰禁止の指針】
2020年4月から,親による子どもの体罰禁止を盛り込んだ改正児童虐待防止法が施行されます。厚生労働省は,2020年2月に,体罰の具体例などを示したガイドラインをまとめています。
体罰の具体例としては、(ア)注意したが言うことを聞かないので頬をたたく,(イ)いたずらしたので長時間正座させる,(3)友達を殴ってけがをさせたので同じように殴る,(4)物を盗んだのでお尻をたたく,(5)宿題をしなかったので夕飯を与えない,といった例を列挙しています。
他方で,体罰に当たらない具体例としては,(ア)道に飛び出しそうな子どもの手をつかむ,(イ)他の子どもに暴力を振るうのを制止する,といった例を列挙しています。
【警察が昨年1年間に虐待通告した件数は,9万7842人で,過去最多を記録しました。】
警察庁の今月の発表によると,全国の警察が昨年1年間に児童相談所に虐待通告した件数は9万7842人で,昨年より21.9%増加しました。心理的虐待が最も多く,全体の7割を閉めています。そのうち,6割は面前DVによるものです。他方,昨年1年間の警察が把握した刑法犯は74万8623件で,前年を8.4%下回り,戦後最少です。
【最高裁は,今月5日,嫡出否認の権利を夫のみに認めた民法の規定が違憲であるとの訴えを棄却し,高裁の判断を維持しました。】
民法では,結婚中に妻が妊娠した子は法律上「夫の子」と推定する「嫡出推定」を定めています。嫡出推定の規定があるため,母が父に知られないよう戸籍を出さないことを選択し,無戸籍となる子が存在します。
この父子関係を法的に否定する嫡出否認の権利は,民法上,夫のみに認められており,その規定の合憲性を争った裁判で,最高裁は嫡出否認の合憲性については判断せずに,高裁判決を維持する判断をしました。なお,親子関係不存在確認の裁判をするということも考えられますが,この場合,嫡出否認の場合とは戸籍の訂正内容が異なり,無戸籍の子は母の戸籍に直接記載され,父欄は空欄になります。
【婚姻費用分担請求を申し立てた後,離婚しても,請求権は失われないとの判断を最高裁が示しました。】
2020年2月23日,最高裁は,夫に対し妻が婚姻費用を調停で求めていた場合,その後,離婚が成立しても,婚姻費用の請求権は失われず請求できるとの判断を示しました。この件については,一審の裁判所は夫側に支払を命じていましたが,高裁は妻の申立を却下していました。
【ひとり親家庭の支援強化】
今国会では,ひとり親家庭の支援強化に向けて,関連法改正案が提出されます。国民年金の保険料を免除するひとり親家庭の範囲の拡大,障害年金を受給しているひとり親家庭について児童扶養手当を一部受け取れるようにする,配偶者と離婚・死別した一人親の税負担を軽くする寡婦(夫)控除の対象に未婚のひとり親を加える,などがあります。
【昨年12月に発表された世界経済フォーラムの各国の男女格差報告書で,日本は過去最低の121位でした。】
世界経済フォーラム(WFF)は,昨年12月,男女格差報告書を発表しました。この報告書は,毎年発行されています。今回の調査対象は153カ国です。1位はアイスランド,2位はノルウェー,3位はフィンランド,4位はスウェーデン,5位がニカラグアとなっています。アメリカは53位,中国は106位,韓国は108位,日本は121位でした。世界の平均でみると,男女格差は若干縮まっていますが,日本は後退しています。
主要7カ国(G7 アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,イタリア,カナダ,日本)では,日本は常に最下位です。今回,日本の次に順位が低かったのはイタリアで,76位でした。
【内閣府によるDV防止法と被害者保護のための基本方針改正案で,配偶者暴力相談支援センターと児童相談所との連携が盛り込まれました。】
DVと被害者の保護にあたり,配偶者暴力相談支援センターとの連携機関として,児童相談所が加わることになりました。今月中にパブリックコメントが実施され,3月に告示となる見込みです。
【今年4月から,大阪府は,ひとり親家庭の母又は父が民間の保証会社と養育費保証契約を締結する場合,市町村がその費用を補助する場合に,その市町村に対して半額を支援する制度を開始します。】
大阪市では,養育費の保証促進補助金として,ひとり親家庭の母又は父が,保証会社と養育費保証契約を締結する際に要する経費のうち,保証料として本人が負担する費用の一部を補助しています。補助金の額は、月額養育費と5万円を比較して少ない方の額を選定し,予算の範囲内で交付されます。対象者は,大阪市に居住するひとり親家庭の母または父で,次の要件の全てを満たす人とされています。
①児童扶養手当受給者または児童扶養手当を受給できる所得水準にあること
②養育費の取り決めに係る債務名義(確定判決や強制執行認諾約款付公正証書、調停調書など)を有していること
③養育費の取り決めの対象となるこどもを現に扶養していること
④保証会社と1年以上の養育費保証契約を締結していること
⑤過去に補助金を交付されていないこと
この制度を促進するため,大阪府は,今年4月から,保証料として本人が負担する費用を補助している市町村に対して,大阪府が半額を支援することにしたそうです。
【昨年12月23日,最高裁の司法研修所は,養育費,婚姻費用について,新しい算定基準を公表しました】
最高裁の司法研修所は,2019年12月23日,養育費,婚姻費用について,新しい算定基準を公表しました。基準額を算出する計算式は代わっていませんが,必要経費についてデフレなどの経済情勢を踏まえて年収の46~62%に減っています。他方,この生活費指数については,14歳までは55から62に増えましたが,15歳以上は90から85に減っています。
なお,この新基準は,養育費等の額を変更すべき事情変更には該当しないとされています。
【10~20代のゲーム依存に関する厚労省の調査結果】
厚労省は,無作為で選んだ全国の10~29歳の9000人を対象としたゲーム依存に関する調査を(回答率56.6%)今年の1~3月に行い,その結果が公表されました。
過去1年間でゲームをした人は85%,このうち,平日で6時間以上ゲームをする人は2.8%,4時間以上6時間未満は6.5%,3時間以上4時間未満は9%でした。ゲームをした人のうち18.3%が,平日3時間以上の時間を費やしています。休日では,4分の1が4時間以上ゲームをし,6時間以上も12%です。全体の15%以上が平日3時間以上,全体の20%以上が4時間以上ゲームをしている計算になります。また,男性の方が女性より高い割合となっています。
世界保健機関(WHO)は今年5月,ゲーム傷害をギャンブル依存症などと同じ精神疾患として位置づけています。もっとも,ゲーム傷害の患者規模は未だ不明で,厚労省はさらなる調査を進める予定としています。
【住民票やマイナンバーカードに旧姓が併記できるようになりました。】
住民基本台帳法施行令等の改正施行令が,本年4月に公布され,11月5日から施行されています。旧姓併記を希望する場合には,市区町村の窓口で申込が必要です。旧姓は,住民票とマイナンバーカードなどに併記されます。もっとも,申請後は,旧姓記載のない住民票の発行が原則としてできなくなります。
なお,旧姓の使用が認められるかどうかは,各行政機関や民間業者の判断によるとのことです。
【家庭裁判所で使用されている養育費の算出基準について,最高裁司法研修所が新たな基準を策定する方針を固め,12月23日に詳細が公表されることになりました。】
現在,2003年4月に東京・大阪養育費等研究会によって発表された「養育費・婚姻費用の算定方式と算定表」が,裁判実務で利用されています。これに対し,日本弁護士連合会は,2016年,新たな算定方式を公表しました。今回,最高裁司法研修所が公表する予定の新しい基準は,最高裁司法研修所が裁判官4人に委託し,2018年7月から研究してきたものだそうです。
【明石市の養育費の不払い対策を検討する検討会は,養育費の不払い分を市が立て替える方針を固め,2021年春の開始を目指すことになりました。】
養育費の公的な立て替えは,明石市が全国初となります。当初は,理由なく不払いを続ける人に過料を科し,補助金をひとり親に支給することを検討していました。養育費の不払い分を市が立て替える方向への軌道修正により,より素早くひとり親の救済をすることが可能になります。立替額や期間などの詳細は,今後の検討により,決められます。
【経済協力開発機構の「図表でみる教育2019」】
各国が小学校から大学や大学院,専門学校など教育機関に対して行った公的支出の,国内総生産(GDP)に占める割合は,日本は2.9%で,比較可能な35カ国中,最下位であるとのことです。3年連続最下位です。OECDの平均は,4.0%です。また,高等教育に対する公的支出のGDPに占める割合は0.4%で,OECDの平均は0.9%です。
また,大学の理系の修士,博士課程卒業者で女子の占める割合は,日本はそれぞれ,23%,21%で,同じく43カ国中,最下位です。
OECDが15~16歳に実施している「生徒の学習到達度調査」では,日本は男女ともに科学と数学分野で上位ですが,大学院では女性が少ない現実が明らかとなっています。
【いじめと不登校の件数】
文部科学省の調査による2018年度の全国の小中高校などで起きたいじめの件数は,過去最多の54万3933件であることが分かりました。2013年の法改正で,いじめ防止対策推進法」のいじめの定義が見直され,いじめとは,「児童等に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」となりました。これは,いじめられた子どもの立場からいじめを判断するというもので,学校側の方でもささいなことでも把握する姿勢がとられるようになってきました。これまで,いじめではないと見過ごされてきたものが,いじめであると捉えられるようになってきています。他方で,未だに,いじめの報告がなかった学校も約2割あり,学校によって対応の差が大きいといえます。
年間30日以上欠席した不登校の小中学生も,16万4528人で過去最多となりました。
2018年度に自殺した児童生徒は332人で,前年度より82人増加しました。
奈良県では,県内の国公私立の小中高校で認知したいじめの件数は7468件,前年度より1802件増加しました。全国で多い方から14番目です。いじめの内容は,「冷やかし,悪口,脅し文句など」が最多です。また,不登校は小学校428人,中学校1243人,高校741人で,いずれも前年度より増加しました。
【配偶者暴力相談支援センターへのDV相談が過去最多となりました。】
内閣府の発表によれば,2018年度に全国283カ所の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた配偶者や交際相手などからの暴力(DV)の相談件数は11万4481件で,過去最多とのことです。うち,日本語が十分に話せない人からの相談は約2000件あったとのことです。
【同性でも,実態があれば内縁関係に準じて不貞慰謝料が認められるとの判決が出されました】
今月18日,宇都宮地方裁判所で,アメリカで結婚し日本国内で約7年間にわたり同居していた同性カップル(女性)について,内縁関係とみなせる生活実態があることを認め,パートナーの不貞行為により破綻したとして,原告の被告らに対する慰謝料請求につき110万円を認容しました。
判決は,社会の価値観や生活形態が多様化したこと,また,同性カップルを公的に認証する自治体が現れている社会情勢などを踏まえて,一定の法的保護を与える必要性が高いとしています。
【兵庫県明石市が「養育費泣き寝入り救済条例(仮称)」の2020年4月からの施行をめざします。】
2020年5月までに施行される改正民事執行法によれば,判決や公正証書等に基づいて裁判所に申し立てをして預貯金や勤務先の情報を入手できるようになります。兵庫県明石市は,離婚でひとり親となった市民が元配偶者らから養育費を受け取れない場合に,明石市で10人いる弁護士資格を持つ市職員が無料で対応することを検討しています。
また,養育費を支払わない相手が明石市民であれば,一定の条件のもと,市が保有する本人の勤め先や本人のもつ不動産などの情報を当事者に開示したり,氏名公表などを可能にすることを検討しているとのことです。さらに,不払い者への行政サービスの一部制限も検討しているそうです。
【2019年5月10日,改正民事執行法が成立しました】
今回の改正は,原則として公布の日から1年を超えない範囲無いにおいて政令で定める日から施行されることが予定されています。(なお,登記所からの情報取得は2年を超えない範囲で政令で定める日から運用開始となります。)
改正民事執行法では,次のように定められています。
1 債務者財産の開示制度の実効性
・財産開示手続の申立に必要な債務名義の種類が拡大され,公正証書等でも可能
・制裁強化(6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)
・金融機関から,預貯金債権や上場株式,国債等に関する情報を取得
・登記所から,土地建物に関する情報を取得
・市町村,日本年金機構等から,給与債権(勤務先)に関する情報を取得(但し,これについては,養育費等の債権や生命・身体の心外による損害賠償請求権を有する債権者のみが申立可能
2 不動産競売における暴力団員の買い受け防止の方策
3 子の引渡強制執行
子の引渡の方法として,裁判所の決定で執行官に引渡を実施させる方法と間接強制の方法が定められました。
【2019年6月19日,改正児童福祉法が成立しました。】
一部を除いて,2020年4月に施行される予定です。
今回の改正児童福祉法の主な内容は次のとおりです。
・親権者等は,児童のしつけに際し,体罰を加えてはならない。
なお,民法の懲戒権のあり方については,施行後2年をめどに検討する。
・児童相談所で,一時保護などの「介入」対応をする職員と,保護者支援をする職員を分ける。
・DV対応機関との連携強化
・都道府県などは,虐待した保護者に対して医学的・心理学的指導を行うよう努める。
・児童相談所の体制強化
・切れ目ない支援のため,転居先の児童相談所や関係機関との間で速やかに情報共有
【改正子どもの貧困対策法が,6月12日に成立しました。】
日本における子どもの貧困率は,2015年の調査で13.9%,現役世代(18歳以上65歳未満)が一人いるひとり親世帯の貧困立は50.8%で,主要36カ国では29位という高い水準にあります。子どもの7人に一人が貧困状態にあるということになります。
改正子どもの貧困対策法では,貧困改善に向けた計画作りを市区町村の努力義務とすることが柱となっています。
【特別養子縁組制度を見直す改正民法などが,2019年6月7日に成立しました。】
特別養子縁組制度は,虐待を受けるなどの事情から,実の親と暮らせない子どもを救済するために使われています。
この特別養子縁組の対象年齢を,原則6歳未満から,15歳未満に引き上げることになりました。1年以内の施行が予定されています。
養親を希望する人の負担を減らすため,家裁の審判手続も2段階に分けられます。
【児童虐待防止法の改正案が衆議院で可決され,参議院を経て6月中旬に成立する見通しとなりました。】
改正案では,親権者や児童福祉施設の施設長らが,しつけとして体罰を行うことを禁止し,これを明記しています。また,民法で規定されている親権者の子どもに対する「懲戒権」について,改正法施行後2年をめどに検討することとされています。
児童相談所の態勢強化も図られ,児相が常時,弁護士による助言・指導の下で適切・円滑に措置決定などを行えるようにすることや,すべての児相に医師と保健師を配置などが盛り込まれました。
【児童ポルノ被害について】
昨年1年間に,警察で摘発された児童ポルノ事件で被害に遭った18歳未満の子どもの人数は1276人でした。このうち,自分の裸の写真を自画撮りさせて,これをメールなどで送らせる,という手法で被害に遭った子どもは,4割を占めています。被害者のうち,中高生は89.8%にのぼるそうです。
【緊急避妊薬が,オンライン診療を通じて,入手可能となる予定です】
厚生労働省の検討会が,2019年3月29日,処方を専門医らに限り,また,1回のみの処方とした上で,オンライン診療で緊急避妊薬を入手できるようにする方針を決めました。
緊急避妊薬は,性暴力や避妊の失敗などで,臨まない妊娠を避けるために飲む薬です。緊急避妊薬は,性交から72時間以内に飲む必要があります。
【児童福祉法等改正案が閣議決定されました。】
2019年3月19日,児童福祉法等改正案が閣議決定されました。施行日は,一部を除き,2020年4月1日で,今国会の成立が目指されます。
親権者らが「しつけ」として子どもに体罰を加えることの禁止や,児童相談所が強制的に子どもを一時保護する介入的対応と,保護者支援との担当職員を分けることが主な内容です。
民法が規定する親権者の子どもへの「懲戒権」のあり方も,改正法施行後2年をめどに検討すると明記しています。
総ての児童相談所に弁護士を常勤・非常勤として配置することは見送られましたが,常に助言・指導を受けられるよう態勢を整えることになりました。また,医師と保健師は総ての児童相談所に配置されることになりました。
厚生労働省によれば,スクールソーシャルワーカーや,学校の求めに応じて法律上の助言をする弁護士「スクールロイヤー」の配置も促進するとのことです。
【特別養子縁組見直しの,民法改正案が閣議決定されました。】
2019年3月15日,特別養子縁組制度を見直す民法などの改正案が閣議決定されました。原則6歳未満としている対象年齢を,原則15歳未満に引き上げることが主な内容です。
改正案では,14歳以下の子どもを対象としますが,例外的に15~17歳の子どもも対象とする規定も盛り込まれました。
【2019年2月19日,子どもの引渡の事件について,民事執行法の改正案を閣議決定しました。】
2019年2月19日,離婚等で別居した夫婦に関し,子どもの引渡に関する民事執行法の改正案が閣議決定されました。
改正案では,子どもの引渡に関するルール化や,子どもの養育費等の支払義務を負いながらも支払わないケースについて,確定判決等に基づいて裁判所に申し立てれば,相手の預貯金口座の残高等の情報を得られるようにします。
【2019年2月19日,最高裁は,離婚慰謝料について不倫相手には請求できないとの判決を出しました。】
2019年2月19日,最高裁は,原則として,離婚慰謝料について不貞相手には請求できないとの判決を下しました。不貞相手が離婚について損害賠償責任を負うのは,離婚させることを目的に婚姻関係に不当な干渉をするといった特段の事情がある場合に限られるとしています。
なお,不貞相手に対しては,不貞による精神的苦痛を慰謝するための慰謝料を請求することができます。
【児童虐待の可能性のある子どもの緊急確認等】
千葉県野田市で小学4年生の女の子が両親から虐待を受けて亡くなった事件を受けて,2月8日,児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議が行われ,全国の児童相談所や小中学校は,虐待の可能性を把握している総ての子どもについて,1ヶ月以内に緊急の安全確認を行うこととなりました。厚生労働省からの事務連絡が2月14日に発出されています。
また,虐待情報の取扱についても,「保護者に虐待を告知する際には子どもの安全を第一とするとともに,通告者保護の観点から,通告元は明かせない旨を保護者に伝えることを徹底すること」「子どもの安全が確保されない限り,子どもからの虐待の申し出等の情報元を保護者に伝えないこと。学校,教育委員会等において保護者から求めがあった場合,児童相談所等と連携しながら対応すること」といった新たなルールが設けられます。
文部科学省も,長期欠席している子どもについて,明確に虐待が疑われるケースでない場合についても,対応をとる方向で検討に入りました。
なお,昨年1年間で,全国の警察が児童相談所に通告した18歳未満の子どもは8万人を超え,過去最多となりました。
【AI(人工知能)ソフトを用いた,いじめ事例の検討】
大津市教育委員会は,2019年4月から,AI(人工知能)ソフトを用いて傾向を探る,いじめ対策を始めます。
大津市教育委員会では,これまで蓄積された過去の事例約9000件をAIソフトに分析させ,深刻化する可能性や注意点などを教職員に提示するシステムの運用を始めます。これまでの過去の事例の分析に当たっては,ワーキングチームでAIに分析させる項目を絞り込む,とのことです。
大津市によれば,市の介入が必要なほど深刻化したいじめ事案の多くが,若手教職員のクラスで起きている傾向があるそうです。AIソフトによって,例えば,小学低学年でいじめの発生が目立つ時期,短期でいじめが収束した例の特徴,いじめが起きやすい状況,起きた後に有効だった対処方法などが,明らかになることが期待されています。
AIによる分析をした上で,ケースごとの対処法をまとめた冊子を教員に配付し,さらに,今後は,電子書籍化して教職員に配付されているノートパソコンでも閲覧できるようにするほか,データも随時更新する予定とのことです。
【日本の男女格差は,149カ国中,110位】
世界経済フォーラムは,昨年12月に報告書を発表しています。この報告書によると,日本は男女平等について,149カ国中110位でした。主要7カ国(G7 アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,カナダ,イタリア,日本)で最下位です。
日本では,女性の国会議員数が非常に少なく,政治分野で125位でした。また,経済分野でも,117位でした。
【DV等支援措置対象者を相手方とする調停等の申立について】
昨年11月30日付けで,最高裁判所から各裁判所に対し,事務連絡が発信されています。
この事務連絡では,①原告等が被告等の住民票の写し等を取得することができない場合の対処,②裁判所が取得した被告等の住民票上の住所の管理について問題点及び対応策が提示されています。
これにより,今後は,DV等支援措置対象者に対して調停等の申立等をする際には,相手方の住所を調査することができない事情等について報告書・上申書を裁判所に提出の上,裁判所から市町村に対して,職権で調査嘱託する方法が採られることになりました。
対応策の要否及び内容については,最終的には事案ごとに判断されるそうです。
【本年10月,民事執行法の改正要綱を法制審議会が答申】
現在の制度では,裁判に勝訴し,養育費,その他の金員を受け取る権利が確定しても,相手方が判決を無視したり,財産を隠匿した場合には,実際に金員を回収することができません。
そこで,民事執行法の改正により,確定判決に基づいて裁判所に申立をすれば,相手方の預貯金口座の残高や不動産などの財産情報を,指定した金融機関や公的機関から入手できるような手続を盛り込みました。犯罪被害の賠償金や養育費の取り立ての場合は,相手方の勤務先の情報も入手できるような手続にしています。
また,現行の財産開示手続については実行性に乏しいとの指摘がありますが,これについても,不出頭や虚偽主張の場合の罰則を,強化する方針となりました。
【不登校児童が5年連続増加,いじめ認知は過去最多】
昨年度に全国で不登校の小中学生は約14万4000人,小中高校などの把握したいじめは約41万4000件で,いずれも過去最多となりました。
不登校の小中生のうち,90日以上欠席している割合は中学生に比べ,小学生は少ないそうです。また,小中ともに,全体では約4人に一人が再び登校するようになっているそうです。
いじめの認知件数の増加は,いじめへの意識が高まり,積極的に把握した結果だといえそうです。もっとも,1000人あたりのいじめの認知件数は,自治体あたりの差が大きく,今後も,いじめの把握について継続的な取り組みが必要です。
奈良県内では,国公私立の小中高でのいじめの認知件数は5666件で前年度の2487件から2倍以上に増えています。いじめの内容について,県内の公立校でみると,「冷やかし,からかい,悪口,脅し文句など」が小学校59.9%,高校67.3%でいずれもトップです。
【東京都が虐待防止条例骨子案で保護者の体罰禁止を明記】
東京都は,先月,子どもへの虐待防止を目指す条例の骨子案を公表しました。条例案では,保護者らの責務として,「体罰を子供に与えてはならない。」と明記し,また,子どもへの暴言など,「品位を傷つける形態による罰」も禁止しています。
東京都の条例の骨子案は,目黒区で当時5歳の女の子が虐待で死亡した事件を受けています。自宅アパートからは,「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」などと記されたノートがみつかりました。今年1月下旬ころから十分な食事を与えられなかったとされ,3月2日に亡くなっています。
【妊産婦の死因は,自殺が最も多い】
厚生労働省研究班が今月発表したところによれば,2016年までの2年間で妊産婦の死因としては,自殺が最多であったとのことです。少なくとも102人が自殺しています。年齢別では,35歳以上の自殺率がほかの年代より高く,初産婦は2人目出産の約2倍です。
また,2014年度に東京都世田谷区の妊産婦約1300人を対象にした心の状態の調査では,産後2週時点で初産婦の25%は鬱病の可能性があると判定されている,とのことです。
これらのことから,産後うつを早期に発見し,治療や支援につなげていく必要性が高いといえます。
【兵庫県明石市が,養育費の受け取りを保証する制度を始めます。】
明石市は,本年11月から1年間,モデル事業として,離婚した人が養育費を受け取れるよう保証料を負担する制度を始めます。その後,本格導入を検討するとのことです。
対象は,調停や公正証書等で養育費についての合意をしている明石市の市民です。明石市は,上限を5万円として,1ヶ月分の養育費と同額の保証料を業務委託先の民間総合保証会社に支払います。保証会社は,養育費が滞れば,立て替え払いをし,同時に,養育費の支払義務者に督促,回収を行います。
【大阪高裁で,嫡出否認の訴えを夫のみに認める民法の規定が違憲との訴えを,棄却しました】
現行の民法では,772条に嫡出の推定,774条に夫が嫡出の否認ができること,777条に,嫡出否認の訴えは夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければならない,と規定されています。
この高裁の事案では,女性は夫の暴力から逃げて別居中に,別の男性との間で子をもうけました。離婚後,この男性の子として出席届を出したところ,嫡出推定の規定により離婚前の夫の子と推定され,不受理となりました。女性の娘と孫の二人は,女性の元夫が死亡した後に戸籍を取得しています。
法務省の把握している無戸籍者は約700人おり,うち75%が,嫡出推定の規定を避ける目的で出生届けを出さずに無戸籍となっているそうです。
弁護士会でも,無戸籍問題の解消に向けて,行政と共に取り組んでいます。
【法制審議会の部会が,子の引渡手続を強化する方向での要綱案をまとめました】
日本は2014年にハーグ条約,つまり,国境を越えて連れ去られた子どもを元の国に戻すためのルールに,加盟しています。ところが,日本の引渡手続に時間がかかり,また,実効性も弱いため,アメリカ国務省からは条約不履行国に分類され,改善を求められています。
そこで,現状の,①間接強制の手続を原則不要とする②元の国の親が立ち会えば同居する親が不在でも代替執行できる,という内容で,要綱案がまとめられました。
国内夫婦についても,同様の規定とする方向で検討されています。
【奈良市の小中学校で,スマートフォンアプリによる“いじめ相談”】
奈良市教育委員会は,匿名でいじめに関する相談や報告ができるスマートフォン用アプリを市立の全小中学校の生徒に無償提供することを決めました。
今後,各校で9月~10月,「いじめの脱傍観者授業」を実施し,生徒にアクセスコードを配付する予定です。
平日の午前9時~午後5時は,いじめ防止生徒指導課の相談員と指導主事が対応します,それ以外は,翌日の返信となりますが,緊急の場合は24時間対応の「ストップいじめ ならダイヤル」に電話するよう促すそうです。このダイヤルで緊急度が高いと判断されれば,いじめ防止相談課の職員に連絡が入ります。
なお,スマホの所持率は,全国で,小学校高学年で4割,中学生で6割です。スマホを所持していない生徒に対しては,パソコンなどでの利用も呼びかけます。
【2017年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待数が最多を更新しました。】
全国の児童相談所が2017年度に対応した子どもへの虐待件数は13万3778件で,前年度より1万件以上増加しています。調査を始めた1990年度から27年連続で増加しています。種別でみると,配偶者に対する暴力を子どもに見せる面前DVを含む心理的虐待が7万2197件で最多です。身体的虐待は3万3223件,ネグレクト(育児放棄)は2万6818件,性的虐待は1540件です。都道府県別では,大阪が全国最多の1万8412件でした。
また,2016年度中に虐待で亡くなった77人の子どもの検証結果によれば,無理心中以外で死亡した子どもは49人で,0歳児が最多32人です。
【ILO総会でセクハラ禁止条約を目指すことが決まりました。】
国際労働機関(ILO)総会は,本年6月8日,職場でのセクハラを含むハラスメントをなくすため,拘束力を持つ条約を制定すべきだとした委員会報告を採択しました。来年のILO総会で法的拘束力のある条約の採択をめざします。ILOの条約が採択されれば,加盟国は1年以内に国会など批准機関に承認を求める義務があります。日本は基本的には条約制定には賛成だが多くの国が批准できる内容にすべき,との立場です。
【成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法が,6月13日に成立しました。】
成人年齢を20歳から18歳に引き下げることを内容とした改正民法が,6月13日に成立しました。施行は2022年4月1日です。同時に,女性が結婚できる年齢は現行の16歳から18歳に引き上げられ,成人のみが結婚できることになります。別の法律で定められた年齢の規定も一部見直される予定です。他方,飲酒,喫煙,競馬などができる年齢は現在の20歳が維持されます。また,刑事手続で少年として扱われる年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げるため,少年法を改正するかどうかについては,議論が続いています。
【日本の昨年の出生数が94万人となり,1899年以来,最少となりました。】
2017年に日本で生まれた日本人の子どもの数,出生数は,約94万人で,1899年以降,最少となりました。出生数から死亡数を引いた減少数は約39万人でした。
25~39歳の女性人口は,前年比で2.5%減少し,約26万人です。また,女性が一生に産む子どもの数を示す合計特殊出生率も1.43で,前年から下がっています。人口を維持するのに必要とされる2.07には遠く及びません。
他方,2017年の65歳以上の高齢者は,前年から約56万人増加し,約3500万人です。人口の約28%を占めています。
日本の人口ピラミッドは,将来は「棺桶型」になると言われています。
【特別養子縁組制度制度の見直しが検討されています。】
特別養子縁組は,虐待などの理由で実親の元で生活できない子どもについて,血縁のない夫婦が家庭裁判所の判断により,法的な親子となる制度です。特別養子縁組の場合には,実親との親子関係は無くなります。1987年の民法改正で導入され,年間の件数は500件前後とのことです。現在は,原則対象となる子どもの年齢が6歳未満となっており,要件が厳しすぎるとの意見があることから,対象年齢の拡大を含め,今後,法務省が見直しに着手していくことになりました。
【成人年齢を20歳から18歳とする民法改正案が,衆議院法務委員会で可決されました。】
改正案には,女性の結婚年齢を16歳から18歳に引き上げ,男性と同じにする内容も含まれます。成人年齢の引き下げは,子どもの養育費の支払の終期にも影響する可能性があります
。なお,民法とは別の法律で規定している飲酒や喫煙,公営ギャンブルのできる年齢は現行の20歳が維持されます。改正案が本会議で成立すれば,2022年4月1日に施行されることになるようです。
【幼児教育・保育の無償化策が2019年10月から実施される見込みです。】
政府は,幼児教育・保育の無償化策について,本格実施の時期を2019年10月からとする方針としました。これは,2019年10月から消費税を8%から10%に引き上げるタイミングと合わせることにしたためです。
【奈良市が全国に先駆け,放課後学童保育(バンビーホーム)の昼食提供事業に補助】
奈良市は,奈良市内の全小学校の放課後学童保育(バンビーホーム)で今年の夏休みから始める昼食提供事業について,保護者の負担軽減のため,一食当たり350円を予定している弁当について100円を公費負担するほか,低所得者層については児童育成料減免制度を適用する方向で検討しているそうです。
バンビーホームの利用者は,5月1日現在,合計3293人で,その半数以上が小学1~2年生とのことです。
【児童虐待の被害に初めて遭った際に誰にも相談しない人の割合は74.3%にものぼります】
警察庁の発表によれば,今年1月にインターネット上で20歳以上を対象にアンケートをし,被害を受けた経験がある本人と家族917人から回答を得た結果,児童虐待の被害に初めて遭った際に誰にも相談していない人の割合は74.3%にものぼるとのことです。
性的な被害で誰にも相談していない人は52.1%,DVでは32.8%が相談していないそうです。
【平成30年5月16日,候補者男女均等法が成立しました。】
平成30年5月16日,「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)が参院本会議で全会一致で可決,成立しました。
この法律は,国会と地方議会の議員選挙が対象で,男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指しています。
衆議院での女性議員の割合は10.1%で,193カ国中158位,先進国では最下位です。
【14歳以下の子どもの数が,37年連続減少しました。】
総務省が発表した人口推計(4月1日時点)によれば,外国人を含む14歳以下の子どもの数は1553万人で,前年より17万人減少しました。総人口に占める割合は12.3%で,統計のある昭和25年以降でみると,過去最低となります。
子どもの数は昭和29年の2989万人がピークとなっています。第2次ベビーブームのころに一旦増加となったものの,昭和57年から減少に転じています。
また,国連人口統計年鑑によると,人口400万人以上の32カ国のうち,日本の子どもの割合は最も低いそうです。
奈良県内もこの傾向は同様です。平成29年時点で,14歳以下の子どもは12.17%,15~64歳は57.61%,65歳以上30.22%となっており,高齢化が急速に進んでいます。
【正社員と非正社員との不合理な格差について,最高裁が今年6月に初判断を示します。】
正社員と非正社員の格差について,労働契約法が禁じる不合理な格差に当たるのか,今年の6月に最高裁が初判断を下す予定です。これまで,地裁の判断は分かれていますが,裁判例は少ないのが現状です。正社員と非正社員の格差の問題はなかなか難しい問題であり,これまでなかなか解消されてきていません。正社員には男性が多く,非正社員には女性が多いという現状から,女性の貧困を招く一つの大きな要因が,正社員と非正社員の格差にあるのではないかと思います。
【子ども食堂について】
「子ども食堂安心・安全向上委員会」の発表によれば,地域の子どもに無料か安価で食事を提供する「子ども食堂」が,全国に2286カ所あるそうです。子ども食堂は,貧困家庭の子どもなどに食事を提供する場です。自治体によっては,補助金を提供し,子ども食堂の開設,運営を促しています。
【昨年一年間に警察が把握したDV被害が7万件を超えました。】
警察庁が今月発表したところによれば,全国の警察が昨年1年間に把握した配偶者などパートナーに対する暴力被害は7万2455件だったとのことです。また,ストーカー被害は2万3079件だったとのことです。DV被害も,ストーカー被害もいずれも過去最多です。
DV被害は14年連続で増加しています。被害者の8割は女性ですが,男性の被害も増加しています。
また,ストーカー被害も年々増加しています。被害者は9割近くが女性ですが,男性が被害に遭うケースも増えています。半数以上が,交際相手や配偶者が加害者とのことですが,加害者が関係不明である事件が増加傾向にあるようです。
【虐待を受けた疑いで警察が昨年児童相談所に通告した件数が6万件を超えました】
虐待を受けた疑いにより警察が昨年,児童相談所に通告した18歳未満の子どもの数は,6万5431人であったことが,明らかになりました。13年連続で通告件数は増えており,昨年からみると20.7%の増加になります。児童相談所が子どもを一時保護した件数も年々増加しており,昨年は3838人で,過去最多となりました。警察が,事件として立件した件数も,殺人などを含め1138件と,昨年より5.3%増加し,過去最多となりました。
【日本私立大学団体連合会が,大学授業料の「出世払い制度」の創設を提案しました。】
日本私立大学団体連合会は,「高等教育機会均等拠出金制度」を提案し,本年2月21日に文部科学省に手渡しました。私立大への公財政支出を大幅に増やし,家計負担も在学中に払う部分を圧縮,8割は卒業後に所得に応じて負担する仕組みです。低所得世帯だけではなく,全学生を対象としています。
同連合会の試算によると,現行制度では,一人あたり,国立大への公財政支出は202万円,家計負担は54万円であるのに対し,私立大への公財政支出は16万円,家計負担は122万円となっており,国立大の学生と私立大の学生で大きく異なります。
もっとも,巨額の財政支出が必要となるため,この提案が実現をみるのは,現状では難しいようです。
【結婚年齢を男女とも18歳とする民法改正案が,今月13日に閣議決定されました】
現行民法では,結婚できる年齢は男性18歳,女性16歳ですが,この規定を変更し,男女ともに18歳とする民法改正案が今月13日に閣議決定されました。結婚年齢の男女差がなくなるのは,民法が制定された1898年以来となります。明治時代に民法を制定した当時の結婚年齢は男性17歳,女性15歳でしたが,戦後の民法改正により,男性18歳,女性16歳とされました。
また,成人年齢も20歳から18歳に引き下げられます。ちなみに2007年に成立した国民投票法が投票年齢を18歳以上とし,また,公職選挙法の改正で2016年夏の参議院選挙から選挙権年齢が18歳に引き下げられています。
飲酒,喫煙,馬券の購入などができる年齢は20歳のまま据え置かれます。また,刑事手続で少年として扱われる年齢の引き下げについては,議論が継続しています。
【「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)」の診断と虐待の考え方】
乳幼児揺さぶられ症候群とは,乳幼児を激しく揺さぶることで死亡や重い後遺症を引き起こす頭部の損傷を言います。日本子ども虐待医学会は,「硬膜下血腫,網膜出血,脳浮腫の3症状があり,3メートル以上の高さからの落下や交通事故の証拠がなければ,SBSの可能性が極めて高いとしています。
これに対し,乳幼児を激しく揺さぶることで前記の3症状が起こるという科学的根拠については,海外でも疑問が呈されています。
3症状があれば,虐待を疑う端緒となりものの,直ちに虐待があったと判断するのではなく,子どもの監護状況などその他の状況も踏まえた十分な検討が必要です。
【性同一性障害で戸籍の性別を変更した後,本人の申立により,これを取り消す判断が家裁で為されました】
性同一性障害と診断され戸籍の性別を変更した人が,「変更は誤りだった」として取消を求めた裁判手続で,昨年11月,家庭裁判所が性別を戻す訴えを認める判断を行いました。
2004年に施行された性同一性障害特例法は,いったん変更した性別の再変更は想定していませんが,家庭裁判所としては,本人のために柔軟な判断を行ったものといえます。
【文部科学省は,高校の学習指導要領の改訂案を公表しました。】
高校の学習指導要領の改訂は,2009年以来となります。新学習指導要領は意見公募手続(パブリックコメント)を3月15日まで実施し,これを経た上で,正式に決定される運びです。新学習指導要領は,2022年度から実施予定です。学習指導要領には,法的基準性があるとされています。
今回の改訂案の基本的な考え方としては,①教育基本法,学校教育法などを踏まえ,これまでの日本の学校教育の実践や蓄積を活かし,子供たちが未来社会を切り拓くための資質・能力を一層確実に育成。その際,子供たちに求められる資質・能力とは何かを社会と共有し,連携する「社会に開かれた教育課程」を重視,②知識及び技能の修得と思考力,判断力,表現力等の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で,知識の理解の質をさらに高め,確かな学力を育成。③高大接続改革という,高等学校教育を含む初等中等教育改革と,大学教育改革,そして両者をつなぐ大学入学者選抜改革の一体的改革の中で実施される改訂。の3つが挙げられています。
その上で,ポイントとして,2「知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」」(「何ができるようになるか」を明確化,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善),3「各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立」,4「教科・科目構成の見直し」,5「教育内容の主な改善事項」(言語能力の確実な育成,理数教科の充実,伝統や文化に関する教育の充実,道徳教育の充実,外国語教育の充実,職業教育の充実),「その他の重要事項」(初等中等教育の一環した学びの充実,主権者教育・消費者教育・防災安全教育などの充実,情報教育(プログラミング教育を含む。),部活動,子供たちの発達の支援)と項目に分け,説明されています。
教科は,地理歴史が再編され,「地理総合」(地理的環境と人間の営みの関わりに着目し,現代の地理的諸課題を考察する。)と「歴史総合」(世界と日本について,現代的な諸課題の形成に関わる近現代史を考察する)が新設され,必修となります。他方で,1989年の改訂で必修とされた世界史は,必修ではなくなります。公民化では,「公共」(主体としての自立,他者との協同でよりよい社会を形成することを考察する)が新設されます。
【生駒市がユースネットいこま」を開設しました】
生駒市は,不登校やニート,ひきこもりなど様々な困難を抱える子ども・若者やその家族の相談を受け,今後の自立に向けた一歩を踏み出すためにはどうすればいいかを一緒に考え,支援する機関として,「子ども・若者総合相談窓口(ユースネットいこま)を,開設しました。
ユースネットいこまでは,相談支援のほか,困難を抱えた子ども・若者やその家族の「居場所」づくりに向けたイベントなども開催していく予定とのことです。
ユースネットいこまは,近鉄生駒駅北口の教育支援施設の2階にあり,土日を含む週5日間(火曜,木曜~日曜の午前9時~午後5時,電話0743-74-7100)対応しています。相談は無料です。
【選択的夫婦別姓に関する世論調査結果】
内閣府は,本年2月,「家族の法制に関する世論調査」の結果を発表しました。
この発表によると,夫婦別姓を選ぶことのできる「選択的夫婦別姓制度」の導入について,「法律を改正しても構わない」と容認する意見は過去再婚の42.5%でした。今回の調査から,調査対象に18歳,19歳が加わり,それ以前の調査とは対象範囲が若干異なるものの,2012年の前回調査に比べ,7%の増加となりました。「改正の必要はない」との反対意見は低下し,前回調査から7.1%減の29.3%でした。
調査は,昨年11~12月,全国の18歳以上の男女5000人を対象に,個別面接方式で実施され,有効回収率は59%とのことです。
この制度をめぐっては,法制審議会が1996年に導入を答申していますが,法改正の目処は今のところ立っていません。
年代別にみると,60歳未満は容認派が5割前後だったのに対し,70歳以上は容認派が28.1%,不用派が52.3%にのぼりました。性別では大きな違いはありません。また,夫婦別姓制度を容認する人のうち,自ら別姓を「希望する」と答えた人は19.8%でした。兄弟姉妹の有無別に見ると、一人っ子は別姓を希望する割合が高かったとの結果が出ています。
夫婦や親子の姓が違うと家族の一体感に影響があるか尋ねる質問では,「絆が弱まる」と答えた人は31.5%(前回比4.6%減)で,「影響ない」は64.3%(同4.5%増)でした。
【「世界経済フォーラム」の報告書(2017年11月)で日本の男女格差は114位】
「世界経済フォーラム」の報告書が昨年11月2日に公表されていますが,男女格差(ジェンダーギャップ)については,日本は144カ国中114位との結果でした。主要7カ国(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・日本・カナダ・イタリア)の中では最下位です。特に日本の男女格差が大きいのは政治の分野で,123位となっています。海外では,候補者や議席の一定割合を女性に割り当てるクオータ制を導入する国もあり,女性議員が増加しています。
ちなみに,日本弁護士連合会は,昨年,副会長のうち2人以上は女性とする「女性副会長クオータ制(男女共同参画推進特別措置)」を導入することを決めました。13人いる副会長を15人に増やし,増員した2人は必ず女性とするという内容です。なお,全国の弁護士のうち女性は約18%です。
女性議員比率が高い国ほど,民主主義の度合いやGDPに占める教育費の割合が高く,軍事費の割合が低い傾向がある,との調査結果もあるそうです。
経済分野でも,所得の男女格差は100位と,依然として大きいものとなっています。
男女格差が最も小さい国は,1位アイスランドで,2位ノルウェー,3位フィンランド,4位ルワンダ,5位スウェーデンの順となっています。東アジア・太平洋18カ国・地域の格差を見ても,日本は15位と最下位にかぎりなく近い状況であり,トップ3はニュージーランド,フィリピン,オーストラリアの順となっています。
【平成28年度の奈良県の児童虐待対応件数が過去最多】
平成28年度の奈良県のこども家庭相談センターや市町村に寄せられた児童虐待に関する相談対応件数は,過去最多の3878件となっています(奈良県,市町村の重複を含みます。)。相談件数は,平成20年度以降,8年連続で増加しています。
虐待の種類別では,心理的虐待が1725件でもっとも多くなっています。これは,子どもの面前でなされたDV(ドメスティックバイオレンス,家庭内暴力)が心理的虐待として通告されるのですが,このDVの件数が依然として多いことが影響しているからです。
主な虐待者は実母が約6割,次いで,実父,実費以外の父,実母以外の母の順となっています。
奈良県は,児童虐待防止行動計画の指針「県児童虐待防止アクションプラン」を平成29年春に改定し,このプランに基づいた施策を進めています。
【奈良市が,給食費や保育料について,児童手当からの徴収を検討】
奈良市は,平成29年度から,総ての市立中学校で完全給食を実施しています。奈良市は,給食費などの滞納について,児童手当からの徴収を検討しているそうです。ちなみに,奈良市の照会結果によれば,調査した他市では,同様の措置を講じているところが約7割あるとのことです。
児童手当法第21条は,要旨,受給資格者の申出による学校給食費等の徴収等について定めています。この規定では,市町村長は,児童手当の受給資格者が,児童手当の支払を受ける前に,児童手当の額の全部又は一部を,学校給食費,その他の学校教育に伴つて必要な費用等について,児童手当から支払う旨申し出た場合には,児童手当から徴収できるとしています。 また,同法第22条は,要旨,保育料については,前条の申出がなくとも徴収できる旨,規定しています。
奈良市の保健給食課によれば,収納率は98~99%を維持しているものの,未収金は平成26年度約572万,平成27年度約759万,平成28年度までの合計は約2200万円にのぼるそうです。このため,市滞納整理課を中心に,児童手当からの徴収の検討を始めたとのことです。
【石川県加賀市が「お腹の赤ちゃんを大切にする加賀市生命尊重の日制定条例」を平成29年6月から施行】
石川県加賀市は,7月13日をお腹の赤ちゃんを大切にする生命尊重の日と定める条例を,平成29年6月から施行しました。7月13日は,母体保護法の公布日です。このような趣旨の条例は全国初だそうです。この条例の審議の過程では,「産む,産まないを決めるのは個人。条例は妊娠したら大事にして産みなさいというメッセージにつながる」「中絶をめぐっては議論があり,条例化は慎重にすべきではないか」といった意見もあがりましたが,賛成多数で可決,成立しました。
生命尊重は,中絶に反対する人たちが使用してきた言葉です。産む,産まない選択は,個人の自由です。この条例に,中絶という言葉は使用されていませんが,背景に中絶に対する非難があるように読み取れます。
市が,個人の自由に属する事柄について,その中立性を疑われるような条例を制定することは,問題があるように思います。このような条例を制定するのではなく,望まない妊娠を無くし,あるいは,妊婦の出産への不安を解消するといった施策を講じることが,大切ではないでしょうか。
【性犯罪の被害に遭ったら,警察の電話「♯8103」(ハートさん)へ】
平成29年8月3日から,性犯罪の被害に遭った人が警察に相談する電話番号が,全国共通の「♯8103」(ハートさん)になりました。この電話に対応するのは,電話の発信場所を管轄する都道府県警察の性犯罪捜査担当者らです。奈良県の受付時間は24時間(夜間、土日祝日、年末年始は警察本部の当直員が対応)です。女性が相談しやすいよう、原則として女性警察官が対応しますが,女性警察官が不在の場合,男性警察官が対応する場合もあるようです。京都,大阪,兵庫などでは,時間外の場合には,留守番電話対応となっています。
【大阪府警で,児童虐待の危険度を警察官が客観的に判断できるシステムの運用を開始しました。】
本年6月1日より,大阪府警は,児童虐待の危険度を警察官が即座に客観的に判断できるよう,独自システムの運用を開始しました。50項目のチェックリストについて入力すると,危険度がA~Dの4段階で表示される仕組みなのだそうです。このチェックリストは,本年4月から新設された専門部署である,児童虐待対策室が作成しました。例えば,「保育所や幼稚園などに在籍しておらず,第三者の目が行き届かない」「一時保護歴,または施設への入所歴がある」などの項目があり,また,項目ごとに算出結果への反映も異なるそうです。児童への危険度が高い項目に一つでも当てはまった場合には,他の項目によらずに危険度Aと判定されることもあるとのことです。大阪府警の全65署で行った算出結果は,児童虐待対策室に集約され,今後の対応にも生かされるそうです。
【大阪家裁の「親ガイダンス」の取り組みについて】
昨年1月から,大阪家庭裁判所は,離婚調停等を申し立てた子どものいる当事者に対する「親ガイダンス」の本格実施を始めています。大阪家裁に調停を申し立てると,できるだけ第1回調停期日までに裁判所のガイダンスを受けるよう,案内が送付されてきます。このガイダンスは,家庭裁判所の職員である家庭裁判所調査官による講義形式で約90分行われ,男女別に20人ずつ,週1回程度,開かれています。
内容は,子どもがいて離婚する場合には何を決めないといけないか,両親の離婚は子どもの生活や気持ちにどう影響するか,どうすれば子どもへの影響を減らせるか,というもので,子どもの心理や面会交流,養育費の意義などが分かりやすく説明されます。なお,プライバシー保護及び定員などの関係から,本人と代理人弁護士以外は参加できません。また,ガイダンスは集団で実施されますが,父母の日時は別に設けており,互いの申込み日時が知られないようにされています。また,当日,名前を呼んだり,個別の事情に触れるということもありません。
大阪家裁の親ガイダンスを受講した人へのアンケート調査では,約9割が「参考になった」「まあ参考になった」と回答しています。
このような大阪家裁の「親ガイダンス」の取り組みは,各地の裁判所にも広がっており,今春から名古屋,鹿児島の家裁も導入しました。アメリカなどでは,ガイダンスをしたことで訴訟期間が短くなるなど,その後の父母の関係によい影響があることが報告されているそうです。
総務省や最高裁の統計によれば,2015年の離婚は22万6215件で,協議離婚が約9割を占めています。家庭裁判所の調停手続の利用は,同年度で約4万8000件で微減傾向が続いている一方,離婚後の子どもとの面会交流をめぐる調停の申立件数は約1万2000件で,15年前の5倍以上に増加しているといいます。
離婚を考える人は,機会があれば,ぜひ「親ガイダンス」を受講していただいたら良いかと思います。
【奈良市の子どもの貧困の状況について】
奈良市は,子どもの貧困について実態を把握するため,平成28年11月~12月に,市内の子ども(小学5年生,中学2年生)がいる世帯を対象に生活状況などをアンケートし,平成29年3月に結果を公表しています。
奈良市では,所得が,真ん中の人の半分に満たない相対的貧困層は16.1%でした。ちなみに,国民生活基礎調査から算出されている,国の子どもの貧困率は16.3%で,ほぼ同水準です。奈良市のアンケートによれば,相対的貧困層のうち43%がひとり親世帯です。
他の先進諸国と比較しても,日本の子どもの貧困率は高く,例えば,北欧諸国では子どもの貧困率は5%以下,ドイツでも10%以下であるとのデータがあります。
奈良市の実施したアンケートを見てみると,子どもに尋ねた質問から,相対的貧困層では非相対的貧困層と比べて,①学校に「遅刻はしない」と回答した割合が低い,②授業時間以外の勉強時間について「まったくしない」と回答した割合が高く「1時間以上,2時間より少ない」「2時間以上,3時間より少ない」「3時間以上」と回答した割合が低い,③学校の授業について「よくわかる」と回答した割合が低い,④いやなことや悩んでいることがあるかという質問に対して,「おうちのこと・家族のこと」「友達のこと」と回答した割合が高く,「進学・進路のこと」「いやなことや悩んでいることはない」と回答した割合は低い,⑤家族のことなどで何か困っていることはあるかとの質問に対し,「きょうだいとの仲が良くない」「家にお金がない」と回答した割合が高く,「特にない」と回答した割合は低い,⑥将来どの学校まで行きたいと思うかという質問に対し,「高等学校」「専門学校」と回答した割合が高く,「大学」と回答した割合は低い,⑦自分自身のことをどう思うか,「頑張れば,成果が出せる」「自分は価値のある人間だと思う」「自分には良いところがある」「不安に感じるところはない」「孤独を感じることはない」「自分の将来が楽しみだ」にあてはまるかどうか確認する質問に対して,「あてはまらない」と回答した割合が高く,「あてはまる」と回答した割合は低い,といった結果が出ています。
詳しくは,「奈良市子どもの生活に関するアンケート結果」をご確認いただければと思います。
【遺族年金の男女格差 最高裁が合憲】
本年3月21日,最高裁は,地方公務員災害補償法の規定で,遺族が妻の場合は遺族補償年金を年齢制限なく受け取れるのに対し,夫の受給資格については55歳以上とされていることについて,合憲との判断を示しました。
【再婚の割合】
厚生労働省の人口動態統計の特殊報告によれば,2015年中に婚姻した夫婦で,一方又は両方が再婚の割合は,26.8%とのことです。再婚の割合は,第2次ベビーブームが始まった1971年の10.8%が最も低く,それ以降は増加傾向にあるようです。
【日本の男女格差】
世界経済フォーラム(WEF)が2016年に発表した各国の男女格差(ジェンダーギャップ)に関する報告書によれば,日本の順位は144カ国中111位なのだそうです。四つの評価項目のうち「政治」では,女性国会議員や女性閣僚の割合が少ないことなどから103位,また,「経済」では118位とのことです。
【児相への虐待通告が,昨年5万人を超えました。】
昨年,警察が児童相談所に通告した18歳未満の子どもは5万4227人で,前年より46.5%増加しています。多くは面前DVなどの心理的虐待ですが,育児放棄,身体的虐待も増加しています。
【改正ストーカー規制法の一部が施行されました。】
改正ストーカー規制法の一部が,本年(平成29年)1月3日に施行されました。改正法では,会員制交流サイト(SNS)での付きまといを新たに規制対象に追加し,罰則を強化することを柱としています。また,ストーカー行為罪の懲役刑の上限を6か月から1年に引き上げ,非親告罪とすること,ストーカー行為をする恐れがある人物と知りながら被害者の住所や氏名などの情報を提供することの禁止といった点も,変更されています。さらに,改正法では,危険が差し迫っている場合,事前の警告がなくとも公安委員会が加害者に禁止命令を出せるようにするなど,禁止命令の仕組みも見直されました。この部分は平成29年6月に施行される予定です。
【児童虐待について,家裁の関与が強化されます】
今国会で児童福祉法の改正案が提出され,児童虐待への対応強化として,保護者に対する指導に裁判所が関わる仕組みが新設される見込みとなりました。また,保護者が子どもに近づかないように出す「接近禁止命令」の範囲も広がる見込みです。
【育休の期間が最長2年に延長される見込みです。】
育児・介護休業法の改正案が,来年の通常国会に提出される予定です。本年12月7日の労働政策審議会の雇用均等分科会で,大筋の合意がなされました。育休期間を1年半に延ばしても子どもの預け先が見つからなかった人を対象に,育休を最長2年まで取れるようにするとのことです。また,男性の育児参加を促す対策も進め,子どもの幼稚園の入園式や運動会,配偶者の出産の直後などに取得できる新たな休暇制度の制定を,事業社の努力義務として明記するとのことです。
【所得税の配偶者控除の見直し案が固まりました】
政府・与党は,12月半ばまでにまとめる2017年度税制改正大綱に,配偶者控除を満額受けられる配偶者のパート年収の上限を150万円以下に引き上げる方針を盛り込み,年明けの通常国会に法律改正案を提出する予定です。実施は,2018年1月からで,調整をしています。現在は,パート年収が103万円超から141万円までであれば,段階的に一定額(最高38万円)を世帯主の年収から差し引ける配偶者特別控除がありますが,この仕組みを見直し,150万円までは控除を満額受けられるようにし,そこから段階的に減らして201万円で控除額を0とする予定です。
【配偶者控除廃止が見送りとなりました】
平成28年10月,所得税の配偶者控除廃止を,来年度は見送る方針となりました。財務省は,配偶者控除の対象を103万円から150万円程度に引き上げる検討を行うとしています。他方,配偶者の年収が103万円超になると所得税を納める必要が生じる「課税最低限」は据え置く方針です。また,財務省は,控除を受けられる主な給与所得者の対象から,高額所得者を外す所得制限を設ける検討を行うとしています。
【2016年9月12日,離婚した夫婦間の子どもの引き渡しなどについて検討するため,法務省は法制審議会に民事執行法の見直しを諮問しました。法務省は,法制審議会の答申を受け,2018年ころの改正法案の国会提出を目指します。】
民事執行法の見直しの内容としては,①離婚した夫婦間などで子どもを引き渡す強制執行について規定を明文化,②養育費などの支払いを受けたい人の申立を受けて,裁判所が開いての口座の情報を金融機関に明らかにさせる制度を設ける,③不動産競売で,最高額の入札者が暴力団関係者とわかれば売却できないようにする,などがあります。
①については,これまで,動産の引渡を定めた民事執行法を子に適用してきました。そのため,強制執行のあり方によって,子の心身に悪影響が心配されてきたところです。
【女性の健康の包括的支援に関する法律案が国会に再提出されました】
2016年4月,自民党は,「女性の健康の包括的支援に関する法律案」を国会に提出しました。同法案は,女性の健康の包括的支援に関する施策を総合的に推進することを目的としています。2014年に議員立法で参院に提出されていましたが,同年11月の衆院解散で廃案となっていました。
【女性活躍推進法が平成28年4月から施行されました】
女性活躍推進法は,企業や自治体に女性の登用目標など行動計画の策定・公表を義務づけた法律です。同法は,従業員301人以上の企業に対し,女性の採用や管理職における女性比率の数値目標を盛り込んだ行動計画の策定を求めています。同法の施行に当たり,衆参両院が,男女の賃金格差の把握,非正規労働社の待遇改善,性別役割分担意識の払拭を付帯決議しています。
【夫婦別姓を認めない民法の規定について,最高裁は合憲との判断】
2015年12月16日,最高裁は,夫婦別姓を認めない民法の規定について,合憲とする初の判断を示しました。なお,15人の裁判官のうち,10人が合憲,5人が違憲(3人の女性裁判官全員を含む。)との意見でした。
【女性に6か月の再婚禁止期間を設ける民法の規定は違憲,最高裁初判断】
2015年12月16日,最高裁判所は,6か月の再婚禁止期間を設けている民法の規定について,100日を超える部分は憲法違反であるとの初判断を示しました。他方,原告が請求していた国に対する賠償請求は退けました。
【東京渋谷区が,パートナーシップ証明書の発行を始めました】
昨年11月から,東京都渋谷区は,条例に基づいて,同性カップルに対する「パートナーシップ証明書」の発行を開始しました。保険会社によっては,同性のパートナーでも死亡保険金が受け取れるようになります。同様の制度を,東京都世田谷区でも開始しました。
【夫婦別姓・女性の再婚禁止期間 最高裁が初の憲法判断へ】
民法750条は「夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫又は妻の氏を称する。」と規定し,夫婦別姓を認めていません。また,民法733条1項は「女は,前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ,再婚をすることができない。」と規定し,女性にのみ再婚禁止期間を設けています。これらの規定が憲法に違反するのではないか争われた2件の訴訟について,平成27年2月18日,最高裁第3小法廷は審理を大法廷に回付しました。いずれも,初めての憲法判断が示される見通しです。
【有識者会議報告書,ストーカー罰則強化を求める】
2014年8月5日,ストーカー行為の規制のあり方などを議論してきた警察庁の有識者会議は,報告書をまとめ,ストーカー規制法のあり方として,①ソ-シャル・ネットワーキング・サービス(SNS)によるメッセージ送信を規制対象に②禁止命令などを迅速・効果的に出せるよう検討③罰則の引き上げ③ストーカー行為を親告罪でなくする方向で議論すべき,と提言しました。また,加害者対策や被害者支援についても,提言しています。
【離婚後の子の引き渡しについて】
最高裁は,国際結婚が破綻した夫婦間の子供の取扱を定めた「ハーグ条約」加盟に向け,子供の引き渡しの際の注意点を全国の裁判官や執行官らに通知しました。原則として,公道や保育園での引き渡しはせず,自宅で行うなどとされています。国内結婚の場合も同様の対応を求めています。
【ハーグ条約の発効】
平成25年の第183回通常国会において,国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の締結が承認され,国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(条約実施法)が成立しました。これを受け,平成26年1月24日,日本は,条約の署名,締結,交付にかかる閣議決定を行うとともに,条約に署名を行った上で,オランダ外務省に受諾書を寄託しました。この結果,日本において,ハーグ条約は平成26年4月1日に発効しました。
【改正ストーカー規制法が成立しました】
改正ストーカー規制法が、平成25年6月26日成立しました。主な改正点は次のとおりです。
・拒まれているのにメールを繰り返し送る行為の禁止を追加
・警告や禁止命令を出す権限を被害者の住所地の警察や公安委員会だけでなく加害者の住所地や被害を受けた地域にも拡大
・警告を出した場合は速やかに被害者に伝える
・警告をしなかった際は、その理由を書面で通知することを義務づけ
この連続メール送信については、公布20日後から、その他については、平成25年10月から施行される見通しです。
【改正配偶者暴力防止法が成立しました】
改正配偶者暴力防止法が、平成25年6月26日成立しました。主な改正点は次のとおりです。
・同居中またはかつて同居していた交際相手も対象に追加
平成25年10月から施行される見通しです。
【家事事件手続法が施行されました】
平成25年1月1日、家事事件の審判・調停についての手続法である家事事件手続法が施行されました。これは、従来の家事審判法、家事審判規則を抜本的に見直したものです。
変更の一例は、次のとおりです。
1.婚姻費用の分担請求、養育費請求、財産分与請求の審判事件の管轄が、夫又は妻(であった者)の住所地となりました。
2.審判事件記録の閲覧謄写について、裁判所は例外をのぞき原則として許可しなければならないとされました。
3.離婚調停、婚姻費用の分担請求調停、養育費請求調停、財産分与請求調停など、家事調停の申立書の写しは、原則として裁判所からが相手方に送付することになりました。また、家事事件手続法の別表2の事件(婚姻費用の分担請求、養育費請求、財産分与請求など)についての家事審判の申立書も、同様に相手方に送付することになりました。
4.電話会議、テレビ会議システムが、審判及び調停手続でも利用できるようになりました。但し、離婚または離縁については、調停成立時には裁判所へ出頭する必要があり、電話会議やテレビ会議システムは利用できません。
5.子どもの手続代理人制度が新設されました。