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自営業者の方に関する離婚問題は、それ以外の方の離婚問題と異なり、その特殊性にしっかりと対応することが必要です。そのため、自営業者の方の離婚案件は、その特性についての理解や、労働法等の法律知識が必要となることもあります。(弁)ナラハ奈良法律事務所では、奈良県内の一部上場企業をはじめ、自営業者の方々の顧問もさせていただいており、当法律事務所の所属弁護士は、これまで自営業者の方に関する離婚案件を多数取り扱ってきました。
以下、皆さまに自営業者の離婚問題でぜひ知っておいていただきたい内容を、お伝えいたします。
まず、自営業者の方は、個人として経営していますので、自営業として屋号をつけ、一見、別の法人格をもっているように見えても、会社としての法人格がありませんので、その財産は夫婦共有財産となるのが原則です。
実際、事業用の預貯金口座から生活費が出ていることも多く、確定申告でも、実際には家計で使っている費用が経費として計上されていることも珍しくはありません。
とはいっても、事業用の経費は、自営業を継続していくために、家計とは別途必要となります。当然に、自営業者の配偶者は、離婚に伴う財産分与として、事業用資金と思っていたお金について、財産分与としての支払を求めてきますので、できる限りの対応をする必要があります。
よくあるのは、結婚して、配偶者の家業を他方配偶者が手伝う場合です。配偶者の家業は、配偶者がその親から引き継いでいることもよくみられ、その場合には、配偶者の親も家業を手伝っていることが多いです。家業の経営がうまくいけば、法人化されることもあります。
他方配偶者が配偶者の家業を手伝っている場合、従来は、財産分与割合はその役割分担や貢献度によって必ずしも2分の1とならないという考え方でしたが、原則平等というのが近年の考え方です。もっとも、特殊な技能や経験により多大な財産を形成したのであれば、これを特段の事情として考慮することになります。また、配偶者の親が家業に従事している場合には、親の寄与が考慮されることになります。
配偶者が家業に従事している場合でも、配偶者の親が経営しており、配偶者自身は手伝っていたにすぎない場合には、その財産は、財産分与の対象にはなりません。
離婚に伴う財産分与では、当事者の退職金(将来支給される場合も含む。)が財産分与の対象とされることが多いです。
自営業者の方には、会社員や公務員のような退職金はありませんが、将来、働けなくなったときに備え、私的な年金や保険をかけていることが多く、これらが財産分与の対象となります。
当法律事務所の所属弁護士がかつて扱った案件でも、経営のうまくいっている自営業者の方は、私的な保険に複数加入されていることが多いという印象です。
実務は、財産分与はあくまで夫婦が形成したプラスの財産を分割する制度という立場ですので、夫婦共有財産が皆無で借金しかない場合には、財産分与は認められないということになります。分かりやすく言うと、借金しかない場合に、他方配偶者に借金の半分を支払わせるということはできない、ということです。
借金は、借金をした者が負担するのが原則です。もっとも、プラスの財産がある場合に、借金というマイナス財産を考慮する場合があります。その例が、自営業者の家業でプラス財産が形成された場合、その家業のために負担した借金も考慮すべきという考え方です。この場合、プラス財産からマイナス財産を引いて、それを2分の1にします。
他方、夫(又は妻)が自営業を営み、妻が専業主婦(又は専業主夫)であった場合について、夫(又は妻)の経営が振るわず、マイナスが大きくなった場合、必ずしもプラス財産からマイナス財産を引いて、それを2分の1にするとは限りません。これは、専業主婦(又は専業主夫)は家事労働等の貢献がある一方、借金については責任があったとはいえないからです。もっとも、経験上、事業が大きくマイナスとなっており借金があるのに、家計の預貯金がたくさんあるということは、あまりありません。
離婚したからといって、自動的に連帯保証人の地位を外れることにはなりません。金融機関と交渉し、連帯保証契約を解除してもらう必要があります。
自営業者の方の離婚案件で、必ず直面するのは、その収入が非常に分かりづらいことです。自営業者の方は、実際の収入と、確定申告上の収入に齟齬が生じていることが珍しくありません。
裁判所は、確定申告上の数字を形式的にみるのではなく、実際の収入を基準にしますので、注意が必要です。もっとも、自営業者の収入は、これを主張する者が証明する必要がありますので、家計簿や生活口座などから、主張、立証していく必要があります。
裁判所では、婚姻費用・養育費の算出にあたって算定表を用いていますが、自営業者については総収入の計算方法が給与所得者のように単純ではありません。
自営業者の場合は、その総収入は「課税される所得金額」をまずみることになります。そのうえで、確定申告書の所得から差し引かれる金額のうち「雑損控除」「寡婦、寡婦控除」「勤労学生、障害者控除」「配偶者控除」「配偶者特別控除」「扶養控除」「基礎控除」は、現実には支出されていませんので、これらを加算します。また、「青色申告特別控除」も、現実には支出されていませんので、加算します。さらに、専従者給与についても、現実に支出されていない場合には、加算します。また、「医療費控除」「生命保険料控除」「損害保険料控除」も、算定表の考え方で用いる特別経費で考慮されるため、加算することが必要です。さらに、「小規模企業共済等掛金控除」「寄付金控除」は、性質上、婚姻費用・養育費に優先するものではありませんので、加算します。
なお、自営業者の収入は、変動があることが多く、数年間の平均値をとることもよくあります。
「減価償却費」については、税法上は、耐用年数に応じて毎年一定額を必要経費として控除することができますが、現実にはその年に支出されたものではありませんので、課税される所得金額に加算するのが原則です。もっとも、その取得に当たって、借金をしている場合には、別途、考慮が必要となります。
給与収入又は事業収入のいずれかに換算して計算することになります。
婚姻費用の算定にあたっては、裁判所で、「婚姻費用算定表」が使用されています。自営業者の方が高額所得である場合に、この算定表をそのまま当てはめることができないため、その計算方法が問題となります。
考え方はいくつがありますが、まず一つ目の考え方は、算定表の最高額を上限とする方法です。現在の算定表は、給与所得者の上限額は2000万円、自営業者については1567万円となっています。
二つ目の考え方は、婚姻費用算定表で婚姻費用を算出するにあたって用いられている基礎収入割合を、上限に該当する数値(給与所得者34パーセント、自営業者47パーセント)より若干低くする方法です。
三つ目の考え方は、基礎収入の算定に当たり、総収入から控除する各費目の額・割合を修正したり、貯蓄率を控除する方法です。
四つ目の考え方は、同居中の生活レベル等から算定する方法です。
いずれの考え方が採用されることになるのか、事案や裁判官の考え方によって異なります。
養育費については、婚姻費用の考え方で述べた四つの考え方のうちの一つ目の考え方、即ち、算定表の上限額を上限とする考え方が多数のようですが、これに対して批判的な見解もあります。
自営業者の方は国民年金に加入することになります。したがって、いわゆる年金分割制度の対象ではありません。
もっとも、国民年金基金、個人型確定拠出年金、私的な年金保険等に加入している場合には、財産分与として考慮されることがあります。
夫又は妻が自営業者である方、また、その配偶者の方が弁護士に離婚問題を依頼されると、次のようなメリットがあるでしょう。
自営業者の方は、ご自身で仕事を切り盛りしており、皆さま多忙です。
離婚を希望されるのであれば、早期に弁護士にご相談いただき、今後、どのような方針、手続をとって、離婚を目指すのか、法的なアドバイスを受けていただいた方が良いでしょう。なお、弁護士には守秘義務があり、弁護士に相談した内容が、相手に漏れることはありません。また、弁護士があなたの意向に反して、弁護士に依頼するよう勧誘したりすることは、一切、ありません。
当法律事務所の所属弁護士は、これまで合わせて累計1000件以上の離婚相談をお受けしています。奈良という地域に根差した法律事務所として、皆さまに寄り添った温かいご相談を心がけています。ご相談は初回60分無料ですので、ぜひご相談にお越しください。
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